ニュースを見るための銃の基礎知識

ニュースを見るのに、銃の知識はなくても構いません。しかし少しだけ銃の知識があると、ニュースをより深く知ることができることがあります。例えば2013年に起きた餃子の王将の社長射殺事件で、「凶器は25口径の自動拳銃」と聞いた時に、あれ?っと思えるのです。そういったわけで、少しだけ銃の知識に関して書いてみたいと思います。



関連記事:映画やマンガのおかしな銃の描写

銃のサイズ表記

拳銃にはさまざまなサイズがあります。一般的なサイズ表記は、使用される弾の直径や銃身の内径でしょう。22口径や38口径という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。これは38口径は直径が0.38インチという意味で、約9mmになります。ですから数字が大きくなるほど、大口径になるというわけです。



ここでややこしいのは、アメリカではインチ表記なのにヨーロッパはメートル法が使われることです。そのため7.65mmなんて表記もあったりします。これが混乱の元凶なのですが、どちらの表記も数字が大きくなれば大口径になると覚えておけばいいと思います。そして例外も多くありますが、一般的に大口径になるほど殺傷力が上がります。

マグナムとは

銃の用語でマグナムという言葉もよく聞かれます。元々はワインやシャンパンのボトルサイズを表す言葉です。750mlが標準的なボトルサイズですが、1リットル以上の大型ボトルをマグナムと呼んでいました。

銃のマグナムは、火薬を多く詰めた弾丸のことを言います。有名なものでは國松警察庁長官狙撃に使われた357マグナムがありますが、これは38口径の弾を長くして火薬量を増やしたものです。多くの火薬を使うので、弾丸の初速が速く破壊力も増します。44マグナムというのも有名ですが、これは44口径という大型口径のマグナム弾になります。

※357マグナム弾

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44マグナムは、熊に遭遇する可能性があるハンターから、とっさに使えて熊を撃退できるサイドアームを求める声があったので、スミス&ウェッソン社が開発しました。特殊用途のため一部のハンターの間でしか使われていませんでしたが、71年の映画「ダーティハリー」で使われて、知名度が一気に上がりました。

※ダーティハリー

当然ながら44マグナムは高い殺傷力を持ちますが、反動が大きく命中精度は低いので、映画のように対人用に使われることは滅多にありません。

22口径はオモチャなのか?

テレビドラマなどでは、22口径の銃は玩具のように言われます。現実世界でも「殴るよりはマシ」という声もありますが、実際には22口径が最も多く売られています。護身用の拳銃から狩猟用のライフルまで、22口径が最も多く使われているのです。日本でも浅間山荘事件で犯人グループが使っていたライフルが22口径でした。

22口径と言っても、様々な種類の弾丸が売られています。22ショート弾、22LR(ロングライフル)弾、22マグナム弾があります。火薬量はショートが最も少なく、マグナム弾が最も多くなります。一般的に22口径の銃というと22LR弾を指しますが、ショートもマグナムも単に22口径と表記されることの方が多いようです。

※左から22ショート、22LR、22マグナム

最も多く売られている22LR弾は、発射する銃の構造や銃身の長さにより威力が変わります。短い拳銃だと十分に加速できないまま発射されるので初速が遅く、破壊力も低くなります。しかしライフルなど十分な長さの銃身だと、加速が良いので狙撃などにも使われます。狩猟用ライフルでは最もメジャーな弾丸です。

その一方、かつて女性がハンドバッグに入れておくために流行った小型拳銃に使われていた22ショート弾は、銃身が短い小型拳銃から発射されるうえに火薬量も少ないので、威力は十分とは言えません。オモチャと揶揄されるのは、これを指して言っている場合も多く、22LR弾は十分な殺傷力を持っていると言えます。

25口径は珍しい

先ほど書いた、餃子の王将の社長の狙撃事件ですが、25口径というのは珍しい銃です。1940年代までは多く製造されていましたが、近年ではあまり見られません。25口径が撃てる拳銃の新製品は皆無です。なぜそんな珍しい拳銃を使用したのでしょうか?少しだけ拳銃に詳しいと、そういった疑問が出てくるのです。

※FNベビーピストル

25口径の銃に使われる代表的な弾は25ACPと呼ばれるもので、ベルギーの銃器メーカーFNのベビーピストルという全長が11センチ程度の拳銃用の弾として作られました。ポケットに入るほど小型で軽量のため、護身用として多く生産されましたが、ベビーピストルは79年に生産が終了しています。今もライセンス製品が製造されているようですが、25口径というサイズは決してメジャーな存在ではなく、なぜ餃子の王将の社長殺害に使われたのか不思議な気がしました。

日本に入り込む銃器

かつて日本の暴力団は、フィリピンなどで作られた安価な銃を密輸していました。しかし近年ではロシアのトカレフやマカロフの中国製が出回るようになり、一部には米軍が採用していたイタリアのベレッタ社の銃もあるようです。これらの銃は7.62mmや9mmで、これまでのフィリピン製の38口径とは見た目も性能も全く異なります。

2016年に和歌山の建設会社で起きた銃による殺傷および立てこもり事件では、犯人がコルト社の45口径の自動拳銃とオーストリアのステアー社のGBという38口径の拳銃を使用しました。暴力団でもない一般市民が、本格的な軍用拳銃を使用して犯行に及んだ事実は、関係者に大きな衝撃を与えたようです。


国内、国外で銃を使った事件が起こった時には、こうした銃器も見ておくと興味深い点に気がつくかもしれません。特に一般の報道では見落とされがちな点なので、意外なことに気づくことがありますよ。


※これはライターです。

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