冬に備えてコートを見直す /コートは何を買えばいいのか

暑い夏が終わると秋がやってきて、寒い冬が訪れます。冬になるとどんなコートを買ったら良いのかと相談を受けることがあるので、少し早いですがコートについて考えてみましょう。今回はスーツを着た男性をメインに、カジュアルなコートも少し取り上げたいと思います。




知っておきたい基本のコート

コートなら何でもスーツに合うわけではありません。スーツに合うものと合わないものがあります。まずはコートの種類を知っておきましょう。

(1)チェスターフィールドコート
最上級のフォーマルなコートで、ビジネスだけでなくさまざまな儀典にも使えます。チャコールグレイ(黒に近い灰色)なら、天皇陛下や国王陛下と会う時にも使えるほどで、一着持っていればどんな場合にも使えます。ただ堅苦しい気もするので、人によっては苦手かもしれません。またウールのコートなので暖かく、東京ではスーツの上に着ると冬であっても少し暑い日もあります。ある程度の役職についている人なら、一着は持っておきたいコートです。

※チェスターフィールドコートを着るチャールズ王太子(中央)とアンドルー王子(左)

(2)チェスターコート
最近よく使われる言葉で、ウールのコートを何でもかんでもチェスターコートと表記されているので、何をもってチェスターコートなのかは不明です。ビジネスに使えるものから、スーツとは相性が良くないカジュアルなものまで、さまざまな種類が各ブランドから出ています。最もフォーマルなチェスターフィールドコートとは正反対に、カジュアルすぎてスーツにすら合わせられないコートもチェスターコートとして売られているので、もはや定義できないほど幅広くなっています。



チェスターフィールドコートとチェスターコートに関しては、以下の関連記事も参照してください。チェスターフィールドコートを探すなら、既製品ではほとんど見かけないのでオーダーすることをお勧めします。

関連記事:最近流行のチェスターコートってなんだ? ウールのコートを考える


(3)トレンチコート
兵士の戦闘服だったトレンチコートは、チェスターフィールドコートに比べるとカジュアルなコートです。しかしスーツにも合うコートとして、ビジネスにも十分に使えます。レインコートの位置付けなのでフォーマルな場所には不向きで、カジュアルからビジネスぐらいまでの範囲で着るのが良いでしょう。かしこまった着方をするのではなく、皺と汚れがあっても当然のコートでしたが、最近は小奇麗なトレンチコートが人気のようです。



関連記事:トレンチコートの色は黒を避けた方が無難です

関連記事:バーバリー VS アクアスキュータム /名門コートブランドは何が違うか




(4)バルマカンコート(ステンカラーコート)
トレンチコートを簡略化したコートで、使い方はトレンチコートと同じになります。あくまでもレインコートで、雨に濡れるために着るコートです。しかし日本の気候にはちょうど良いため、最も使い回しが良いコートとして人気です。

※映画「ブリット」でバルマカンコートを着るスティーブ・マックイーン



(5)ダッフルコート
元々は漁師の作業着で、イギリス海軍に正式採用されてから広まりました。「ダッフルコートは女子供が着るコート」と言う人もいますが、とんでもない話です。軍服という出自から見てもわかるように、大人の男性にこそ来てほしいコートです。現在のダッフルコートにはさまざまな種類があり、ミリタリーテイストのものから可愛らしいものまであります。シルエットを選べば、スーツにも合います。

※映画「ナバロンの要塞」の一コマ

元々が軍服だったので、カジュアルからシルエットによってビジネスに使えると考えていいと思います。ただイギリスの軍人にはタキシードの上にダッフルコートを羽織り、これが決まっている人もいますイギリス海軍の軍人なら、制服の上にダッフルコートを羽織ることがあるので当然のことかもしれませんが、我々一般人がタキシードに合わせるのは少しだけ勇気がいりますね。

関連記事:誰にでも似合うダッフルコートのすすめ



(6)ピーコート
本来の身幅では、スーツのジャケットの上からは着られないのですが、最近はジャケットの上から着るのを前提にしたピーコートも売られています。



ピーコートは海軍の軍服で、慌ただしく動き回る水兵が動きやすくするために着丈が短くなっています。そのためビジネス向きとは言いがたく、カジュアルなコートという位置付けです。

関連記事:ピーコートはどれを選ぶ? /ブランド比較をしてみる



素材で考える

上記のようにコートのタイプで考えると、職種や職場によって許される範囲が違うと思います。お堅い金融機関にお勤めの方はカジュアルなコートは着ていけないということもあるでしょうし、デザイン事務所などカジュアルな服でも大丈夫な方は、ここに挙げたもの以上にカジュアルな、例えばダウンコートなどでも問題ないという人もいるでしょう。



そこでまず考えるのは素材だと思います。例えばウールのコートは暖かいですが、関東より西では冬の間中着ることはないでしょう。特に電車通勤の方は、暖房が効いた車内では暑すぎるため真冬の1ヶ月間から2ヶ月くらい着用するくらいではないでしょうか。

コットンのコートは秋口から着始め、春先まで着用できます。真冬の間はコットンのコートでは寒いですが、着用期間は最も長いと思います。真冬の間でも、スーツの下にセーターを着るなどしてコットンのコートで過ごしている人もいるので、これだけで冬を乗り切り人もいます。

寒い地域ではウールのコートの方が着る期間は長いでしょう。住んでいる地域によって変わってくると思いますが、私は東京に住んでいるのでコットンのコートを着る期間が一番長いですね。

何を買えばいいの?

一着目に買うのはコットンのコートが良いと思います。種類で言うとトレンチコートやバルマカンコートです。秋から春先まで仕えて、本当に寒い期間はセーターなどを使うことで関東より西の地域なら十分に対応できると思います。特に社会人になったばかりで、コートを一着も持っていない人はコットンのコートをまず買うのが良いと思います。



トレンチコートやバルマカンコートを持っている人で、特に寒い日に仕えるコートが欲しいという方は、ウールのコートが良いと思います。大手企業の管理職など、ある程度の社会的地位を得ている人ならチェスターフィールドコートを一着持っておいて損はないと思います。チャコールグレイのチェスターフィールドコートはかしこまりすぎて堅苦しいと感じる方は、もう少し明るいグレイの生地にすると着回しがしやすくなります。



そこまで本格的でなくて良い方は、ボックスコートとか最近ではチェスターコートと呼ばれているコートが良いと思います。先ほども書いたように関東より西ではウールのコートを着られる期間が短いので、特に若い方はカジュアルでも着まわせるこれらのコートの方が良いかもしれません。職種によってはダッフルコートなどのメルトン生地(ウール生地の一種)を使ったコートも、暖かいうえにカジュアルでも着まわせるので良いと思います。

その他のコート

ローデンコート
オーストリアのチロル地方でポピュラーな狩猟用コートです。ローデンクロスと呼ばれる、ウールを煮て圧縮した生地を使っていて、暖かさはウールコートの中でも突出しています。狩猟用なのでややカジュアルな位置づけになりますが、スーツの上から着ても全く問題ありませんし、ちょっとした式典なら問題なく着て行けます。

※ローデンコートを着たフィリップ殿下(右)


ブリティッシュウォーム
イギリスの陸軍士官が着用していたコートで、ヤルタ会談でウィンストン・チャーチルが着ていたことでも有名です。メルトン生地で作られたダブルブレステッドのコートで、やや短い着丈が多いように思います。スーツの上に着るのはもちろん、ミリタリーテイストあふれるこのコートは、カジュアルな着こなしでも十分に使えます。

※ブリティッシュウォームを着るチャールズ王太子(左)


ポロコート
19世紀のイギリスで人気だったポロ競技に起源があり、選手が待っている時に来ていたとも、ポロを観戦する人が着ていたとも言われます。これを20世紀に広めたのはアメリカのブルックスブラザーズで、ビジネスにもカジュアルにも使えるコートとして人気です。



ブリティッシュウォームに似ていますが、エポーレット(肩章)がなくポケットもパッチポケットになっています。またボタンもくるみボタンではありません。


グレートコート
イギリスの軍服でブリティッシュウォームに似ていますが、より着丈が長いのが特徴です。こちらは私物のグレートコートをレビューした記事をご覧ください。

関連記事:暖かさ満点のコート /私物のグレートコートの紹介

まだまださまざまなコートがありますが、それはまた別の機会にご紹介します。

まとめ

何を買ったら良いか迷っている人は、コットンのコートを最初に買うのが良いと思います。金銭的に余裕ができたら、特に寒い日に使うウールのコートを買うという流れでいいでしょう。暖かいコートの方が良いように思われがちですが、あまり暖かいコートは着られる期間が短いので注意が必要です。

コートは使われている生地が多いため、良質のものはどうしても価格が上がります。しかし価格が高いものが良質であるとは限らないので、よく調べてから買いたいですね。




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