誰にでも似合うダッフルコートのすすめ

先日、ある方とダッフルコートについてあれこれ話していました。一般的なイメージとして、ダッフルコートは学生が着る可愛らしいコートですが、それはダッフルコートの一面に過ぎません。無骨で粗野で、働く男や戦う男のコートでもあります。




ダッフルコートの起源

ダッフルコートの起源は諸説ありますが、ベルギーのアントワープ州にあるダッフルという町の生地にあります。15世紀にはヨーロッパ各地に輸出し、羊毛の町として知られていました。この生地を使って北欧の漁師達が仕事用のコートを作り、それがイギリスに持ち込まれます。

イギリスで生まれたダッフルコート

1887年、イギリスのアウターブランド、ジョン・パートリッジがダッフルコートをデザインします。今日のダッフルコートとはかなり違い、着丈はピーコートと同じぐらいです。しかし広い身頃に木製のトグルがついていて、今日のダッフルコートの特徴が見られます。そして丈夫なコートを探していたイギリス海軍が、水兵用にダッフルコートを発注しました。

※イギリス海軍の水兵たち


第一次大戦から第二次大戦のイギリス海軍で、ダッフルコートは重宝されます。極寒の北海などでは、コートの上から着るコートとして使われました。そのため身頃がとても広く、袖も極端に太くなっています。ボタンではなくトグルを採用したことで、手袋を外さずに前を閉めることができるのもポイントでした。

陸軍のバーナード・モンゴメリー将軍もダッフルコートが好きで、あちこちで着ています。そのためモンゴメリー将軍の愛称から、ダッフルコートのことをモンティ・コートと呼ぶようになりました。さらにイギリス特殊空挺部隊(SAS)を創設したデビッド・スターリング大佐もダッフルコートを好み、砂漠で着用する姿が多くの写真に残っています。

※北アフリカでダッフルコートを着るデヴィッド・スターリング大佐


軍から民間へ

第二次大戦が終わると、海軍の兵士は普段着としてダッフルコートを町に持ち込みました。さらに軍が余剰品などを販売し、ダッフルコートが安く売られるようになりました。お金のない若者は、防寒具としてダッフルコートを買い、街着として定着していきます。

※映画「愛の狩人」の一コマ

生地は雨に強く(なにせ海軍用ですし)、幅広の作りはサイズを気にせずに誰でも着ることが可能でした。メンズ・レディースを選ばないシンプルなデザインであり、徹底したシンプルな実用性が人気で、カジュアルな服装からタキシードに合わせる人も出てきます。

安価でシンプルで実用的なダッフルコートは、学生にも人気でした。士官学校の学生は、軍人だった親のお下がりのダッフルコートを着ました。そしてさまざまなブランドが、お洒落なダッフルコートを作りはじめます。50年代から60年代にかけて、ダッフルコートは人気アイテムになりました。

※ダッフルコートにスーツを合わせた例


お洒落になったダッフルコート

一枚布で作られていたダッフルコートに、裏地がとりつけられるなど街着として洗練されていきますが、見た目の大きな変化はトグルの変更でしょう。

Gloverall(グローバーオール)社は、麻紐を皮に、木のトグルをホーントグルに変更しました。近年ではプラスチックが主流ですが、水牛の角で作られたホーントグルは今でも稀に見かけます。この変更はダッフルコートの粗野な雰囲気を一変させ、軍服のイメージをぬぐい去りました。ダッフルコートがお洒落で可愛らしいアイテムになったのです。




さらに色味も変わってきます。イギリス海軍ではキャメルが定番でしたが、街着になってからはさまざまな色が展開されています。



ダッフルコートのブランド

(1)グローバーオール

1951年創業のイギリスのブランドで、軍の余剰コートを国務省の依頼を受けて民間用に販売したことからダッフルコートの定番ブランドになりました。



(2)グレンフェル

元々は畜産業を営んでいたトーマス・ヘイソンスウェイトが、1908年に織布工場を設立したことから会社が始まります。1922年にイギリスの医師で、世界各国を回って診療しているウィルフレッド・グレンフェル卿に出会い、北極圏で活動する際の衣料に苦労していることを聞かされます。トーマス・ヘイソンスウェイトは生地の開発を始め、1923年に完成しました。この生地がグレンフェル・クロスと名付けられました。今やダッフルコートの定番ブランドです。




この他、オリジナル・モンゴメリーナイジェル・ケーボンなど、さまざまなブランドがあります。



まとめ

ダッフルコートは漁師の作業着から軍服、そして街着へと変化してきました。そのためさまざまな顔を持ち、シェイプや素材、色など豊富なバリエーションがあります。

オートバイに乗るワイルドなファッションから、スーツの防寒着として、セーターなどに合わせた普段着など、男女や年齢を問わずに着ることができます。これだけのバリエーションがあると、ダッフルコートが似合わない人を探すのが難しいほどです。

どうも日本では学生服のイメージが強いのですが、それはダッフルコートが持つ顔の一つに過ぎません。寒い冬に向けて、一着持っていても損はしない万能コートです。


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