村田諒太の再戦が決定 混戦のミドル級を解説します
五輪ボクシングのミドル級金メダリスト、村田諒太の試合が決まりました。2017年5月に判定負けしたハッサン・エンダムとの再戦です。あの疑惑の判定と言われたエンダムとのリターンマッチです。そこで今回は、混迷するボクシングのミドル級戦線をまとめてみたいと思います。村田が戦っている世界は、戦国時代のような混乱に満ちています。
1.ボクシングの世界団体
ボクシングには4つの主要団体があり、それぞれ世界王者を認定しています。
WBA:世界ボクシング協会
1921年にアメリカで設立した、最も古いボクシング団体です。現在の本部はパナマにあります。
WBC:世界ボクシング評議会
1965年にWBAから分離しました。本部はメキシコにあります。
IBF:国際ボクシング連盟
1983年に会長選挙を巡る対立からWBAより分離しました。本部はアメリカにあります。
WBO:世界ボクシング機構
1988年に会長選挙を巡る対立からWBAより分離しました。本部はプエルトリコにあります。
この4団体が世界王者を認定するのですから、4人の世界王者が各階級に存在することになります。
※各団体の世界チャンピオンベルト 左上:WBA 右上:WBC 左下:IBF 右下:WBO
2.帝王GGG
現在のミドル級は、WBA、WBC、IBFがカザフスタンのゲンナジー・ゴロフキン(通称GGG)を世界王者に認定しています。GGGは圧倒的なパンチ力で次々に挑戦者を倒し続け、異次元の強さで他のボクサーより頭一つ抜きんでた存在でした。その圧倒的破壊力に、挑戦者がいなくなるのでは?と心配されたほどです。
※童顔ですが、パンチの破壊力が尋常ではありません。
しかし2016年9月、ケル・ブルックをKOして17試合連続世界王座KO防衛の記録を打ち立てた際に、強さに陰りが見えました。そのためGGGとの対戦を希望する選手が増えます。GGGとの試合はファイトマネーが高く、勝てばボクシングの歴史に名を刻めるからです。
さらに2017年3月にダニエル・ジェイコブスとの試合で、ついに連続KO防衛記録が止まり、判定で勝利しました。GGGの衰えは明かで、今や挑戦希望者が殺到している状況です。35歳という年齢も、限界説を後押ししています。
3.GGGを狙うボクサー達
(1)サウル・アルバレス
メキシコ出身で、1階級下のスーパー・ウェルター級の王者でした。人気が高く、長い間ファンはGGGとの試合を熱望していました。一時期はGGGから逃げていると言われていましたが、2017年9月にGGGとの対戦が決まりました。GGGを倒せる可能性が最も高いボクサーという評判です。
※GGGの対戦結果によっては、ミドル級戦線が大荒れになる可能性があります。
(2)ダニエル・ジェイコブス
アメリカ出身の高いKO率を誇る強豪です。今年の3月にGGGに判定負けしましたが、ジェイコブスは手応えを感じていて再戦を希望しています。GGGも「ジェイコブスにチャンスを与えたい」と発言していて、GGG対アルバレスの結果次第では、再びチャンスが巡ってくる可能性があります。
※GGGにKOされなかったため、最大級の評価を得ました。
(3)デビッド・レミュー
GGGにKO負けしてから、その後の勝利でなんとかミドル級戦線に残っているカナダのスター選手です。アルバレスとの対戦を希望していましたが、アルバレスはGGGとの対戦が決定してしまいました。実力的には上位グループにいるので、GGGとの再戦のチャンスを狙っています。村田が戦ったエンダムとの対戦経験があり、4度のダウンを奪って勝利しています。
※スピードは一流ですが、GGGにはパワーの差で圧倒されました。
(4)ビリー・ジョー・ソーンダース
WBOのミドル級王者で、GGGとの対戦を希望しましたがフラれ、次にアルバレスとの対戦を希望しましたが、これもフラれています。世界王者ながら、その存在をないがしろにされている状況で、ビッグマッチを実現できていません。村田が対戦を希望していましたが、ビッグマッチを優先したいソーンダースとの交渉は決裂しています。
※村田なら勝てるという声もありますが、決して弱い王者ではありません。
4.村田諒太の評価
上に挙げたボクサー達から、少し下の位置に村田はいます。村田は試合数が少ないので経験不足が明らかで、強豪との試合経験がないので評価されにくいというのがあります。しかしエンダムとの試合は各国でも判定を巡るトラブルが話題になり、徐々に認知度は高まってきています。
5.まとめ
ウェルター級(66kg)からミドル級(70kg)は競技人口が多く、世界的に見ても激戦区です。そこにGGGという怪物の出現と失速で、大混戦になりつつあります。村田はとても険しい道を歩んでいるといえるでしょう。
それでも村田には期待します。エンダムからインパクトのある勝利を奪えば、注目度が上がり大きな試合のチャンスが巡ってくるかもしれません。久しぶりに日本に登場したミドル級の大器です。WBAの正規王者というタイトルだけでなく、ミドル級戦線に参加して暴れる姿を見てみたいものです。
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