mihoの脱退で岐路に立つLOVEBITES

 2021年8月17日、海外で人気の高い日本のメタルバンド、LOVEBITESのリーダーでありベーシストのmihoが脱退を表明しました。バンドは活動休止を発表し、公式サイトには「私たちは必ず帰ってきます。その時まで待っていてください」と、バンドのコメントがあります。しかしmihoの脱退は、ファンの間では解散を危ぶむ声も上がっています。


LOVEBITESとは

2017年にメジャーデビューした、女性5人のメタルバンドです。デビュー当時から海外での活動を積極的に行い、2018年にはイギリスのメタル専門誌「METAL HUMMER」の新人賞に輝き、同年にはドイツで開催される世界最大のメタルフェス「ヴァッケン・オープン・エア」に出演して1万人以上の観客を沸かせました。これをきっかけに海外のレーベルやエージェントと契約し、海外ツアーを何度も成功させています。

海外ではブラッドストック・オープンエア、ダウンロード・フェスなどの野外イベントに出演し、国内ではサマーソニックにも出演しています。また2019年にはスウェーデンのメタルバンド、アーチ・エネミーの中国ツアーのサポートアクトとして上海と北京のステージに立つと、同年にはイギリスのメタルバンド、ドラゴンフォースのUKツアーに帯同して11都市でサポートアクトを行いました。2020年はコロナ禍により活動が縮小していましたが、2021年には久しぶりの有観客ライブを国内で行い、9月にはそのライブDVDの発売を控えていました。

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突然の脱退表明

前触れが全くなく、公式サイトに脱退が決まったことが掲載されました。本人のコメントと他のメンバーのコメントが合わせて掲載されており、このニュースは衝撃を与えました。私は海外のサイトで発表当日にこのことを知ったのですが、日本での知名度より海外での知名度が大きいバンドらしく、海外のサイトでは悲しみの声や今後についての議論などが活発に行われていました。誰もが突然の発表に驚き、悲しんでいます。

【mihoからのコメント】

ファンの皆様へ
本日2021年8月17日をもって、私mihoはLOVEBITESを脱退いたします。本来であればライブの場などで、これまでお世話になったファンの皆様に私の口から感謝の気持ちと共に直接ご報告させていただきたかったのですが、このような形での突然のお報せとなってしまい申し訳ありません。

ここ数年の環境変化によってアーティストと音楽の関わり方・表現方法の変化が余儀なくされる中で、改めてこれからの自分自身の人生について思い悩み、じっくりと考えた結果今回このような決断に至りました。

〜中略〜

私は本日をもって離れますが、LOVEBITESはこれからも続いていきますので、変わらぬ応援をどうぞよろしくお願いいたします。今まで応援していただき、本当にありがとうございました。

このように脱退の理由が明確に説明されていないため、さまざまな憶測を呼んでいます。また7月22日がmihoの誕生日で、公式がバースディTシャツの販売を行っていたため、不誠実だという声も出ています。さらに9月29日にはライブDVD「HEAVY METAL NEVER DIES - LIVE IN TOKYO 2021」の発売を控えており、なぜこのタイミングで発表したのか?という疑問の声も出ていました。

mihoの功績

本人たちのインタビューによると、LOVEBITESはmihoによって集められたメンバーで結成されました。彼女はバンドのリーダーであり、作曲家であり作詞家でもありました。そのためmihoが手がけた曲は、バンドの代表曲となっているものが多くあります。以下にまとめてみました。


こうして見ると、オールドスクールでストレートなメタル曲の多くは、mihoが手がけたと分かります。M.D.O.はLOVEBITESで最も演奏された曲ではないか?と思えるほど一時期は定番でしたし、 THUNDER VENGEANCEはメタルらしいメタルとして海外でも人気の高い曲です。個性的なメンバーの中で、メタルを言い続けてLOVEBITESのカラーを決定づけたのはmihoだったと言えるでしょう。

円満には思えない脱退劇

なんの前触れもなく脱退当日に発表し、映像での挨拶もなく文章での簡単な挨拶のみでした。コロナ禍の状況ではさよなら公演は難しいでしょうが、事前に何のアナウンスもなく今日で脱退ですというのは唐突な感じがしました。さらに脱退の発表と同時にバンドは活動休止です。mihoが脱退した後に、どのメンバー個人としては公式にも非公式にもコメントを出していません。恐らくですが、何か大きな問題が発生していると思われます。

その問題がバンド内にあるかもしれませんし、miho自身が抱えている問題かもしれませんし、レーベルにあるのかもしれません。ですがこの問題を解決するための話し合いがもたれて決裂し、mihoがバンドを見限って飛び出したのかクビになったかのどちらかでしょう。円満な脱退であればメンバーの誰かがmihoの今後にエールを送るコメントなどがあるでしょうし、mihoにしても今後のLOVEBITESを気遣うコメントがあると思います。

mihoが脱退したことで問題が解決したなら、新しいベーシストを見つけて活動再開となるはずです。しかし問題が解決していなければ、このまま解散となる可能性が高まります。そもそも活動休止を宣言するバンドの多くは、事実上の解散状態にあるものです。単に解散を先延ばしにしているだけの場合も多く、問題が解決しなければ活動を続けることは不可能でしょう。

上昇気流に乗った矢先のコロナ禍

2017年にメジャーデビューすると、2018年にはイギリスのメタル雑誌「METAL HUMMER」に新人賞に選ばれ、さらに世界最大のメタルフェス「ヴァッケン・オープンエア」に出演します。この出演で海外レーベルとも契約を結び、イギリスの「ブラッドストック・オープンエア」にも出演しました。2019年にはアーチ・エネミーやドラゴンフォースのサポートアクトを行い、この年は海外フェスに立て続けに出演しています。



こうして世界的知名度を高め、更なる飛躍が期待された2020年はコロナ禍になってしまい、活動が著しく制限されてしまいました。海外フェスから多くのオファーが来ていたようですが、ほとんどのフェスが中止になってしまい、ニューアルバムの発表やスタジオライブの配信などを行っていました。まさにここからという時期にコロナ禍で失速してしまい、2021年はmihoの脱退という急ブレーキをかけることになってしまいました。多くのファンが残念に思っているのは、まさにこれからという時期にこのような事態が続いたからです。

今後のLOVEBITESはどうなるか

順調に事態が推移すれば、新たなベーシストを迎えて第二期LOVEBITESの出発になるでしょう。しかしこれはかなり難しい作業になります。日本では「バンドにベースは必要か?」といったベースを軽んじる風潮がありますが、実際にバンドをやってある程度上達したらベースの重要性がわかってきます。ベースはリズムとメロディを繋ぐ要なので、簡単には交代できません。バンドでもっとも変更しやすいのはボーカルで、ベースは聞こえにくい割に交代が難しいポジションになります。ましてやバンドが上昇気流に乗ったところでの交代ですから、かなり難しいように思います。

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またLOVEBITESはmihoの夢の実現であり、彼女の意向が強く反映されたバンドです。もっともメタルに拘り、メタルバンドであることを内外に強く意識させてきたのはmihoでした。ライブでasamiが叫ぶ「We are LOVEBITES! and We play Heavy Metal!」は、イギリスのメタルバンド、モーターヘッドの曲「We are Motorhead and we play Rock N Roll!」へのオマージュであり、mihoが繰り返しインタビューで言ってきたことです。mihoの「私たちはメタルを守りたい」という言葉は、海外のメタルファンに突き刺さりました。衰退する一方のメタルに、日本から現れた救世主と彼女たちは言われたのです。

そして残念なことですが、近年の日本のバンドにおいて「活動休止」というのは解散とほぼ同義語で使われています。運良く再始動できた時のために活動休止と言っているだけで、実質的に解散状態にあるバンドがよく使う言葉なのです。その意味でLovebitesは解散した可能性が高く、2度とライブを見ることはできないかもしれません。メンバーが他の形で動き出したら、その時は事実上の解散と見て良いでしょう。

まとめ

デビューから破竹の勢いで注目を集めてきたLOVEBITESですが、これからという時にコロナ禍による失速とリーダーであるベースのmihoが脱退したことにより、岐路に立っています。今後、どのようなことになるのか全く分かりませんが、バンドの動向を見ていきたいと思います。優れたパフォーマンスで海外のメタルファンを圧倒してきただけに、今回の活動休止が残念でなりません。



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