ベーシストという不遇な人々

ベースという楽器に、みなさんはどのような印象をお持ちでしょうか?「音が聴こえないから、よくわからない」「いてもいなくても良さそう」「一番、簡単そう」などなど世間では言われ、さらに「目立たない楽器をあえて選ぶベーシストは変わり者」などと言われたりしています。私の友人はベーシストのイメージアップを図るべく、いつもベースの良さを熱く語っているのですが、最近の某アイドルのベース担当が起こした不祥事に落胆していました。



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ベースってなんだ?

4弦の楽器で、かつてはコントラバスと呼ばれるバイオリンのお化けのような楽器でした。電子ベースの開発は持ち運びを容易にし、演奏の幅を飛躍的に広げていきます。ベースという名前からわかるように、音楽の基礎を受け持つ楽器であり、バンドのリズムの要になる楽器でもあります。

※エレキベースの代表格 フェンダー・ジャズベース

バンドはベースに合わせて演奏した

かつてギターで弾き語りをするブルースマンは、お金に余裕があるとベースを雇いました。ベースが入ることでリズムを任せることができ、音楽に厚みが出るからです。さらにお金に余裕があると、ピアニストやパーカッションを雇っていました。バンドはベースに合わせて演奏し、ベースの腕によってバンドの音楽は大きく変わりました。

※ジャズではドラム無しのバンドもあります。

1920年代にハイハットという、足でペダルを踏むとシンバルが鳴る装置が開発されてから、パーカッションが劇的に変化します。それまでは大太鼓(バスドラム)の上に小太鼓(スネアドラム)を乗せて、一人二役を行うパーカッション奏者がいましたが、ハイハットの発明でパーカッションが一人三役も四役もできるようなり、ドラムセットが誕生します。

※ハイハット


ドラムセットはリズムを刻みながらパーカッション特有のフィルイン(おかず)を入れることが可能で、バンドはドラムのリズムに合わせて演奏するようになっていきます。

それでもベースは重要

ヴォーカルが失敗するとヴォーカリストだけがコケて、他のメンバーは淡々と演奏を続けます。ギターもキーボードも同じです。しかしベースが失敗すると、バンド全体がコケてしまいます。多くのヴォーカリストはベースの音を聞きながら歌っていますし、ギターリストもベースの音を頼りに演奏する人が多いからです。そのため演奏が上手くいっている時はベースは全く目立たないのに、ベースが間違えると一番目立ってしまいます。

ドラムはリズムを刻んでいますが、リズムもメロディも奏でるのはベースぐらいなので、必然的にバンドの全員がベースの音を頼りにするようになるのです。ベースの腕が良いと、バンド全体が引き締まるのは今日も変わりません。

なぜベースは目立たないのか?

とにかく音が太く、全体的にぼわーっと聴こえることが多いからです。CDなどでは音を絞って録音されていることも多く、ベースの音だけ聴き分けられない人がほとんどだと思います。ベースは演奏する人のガイド役という一面があるので、演奏している人に聴こえれば良いという考えもあります。またリスナーにとってベースの音がわかりずらくても、音の厚みを増すことに貢献していれば良いという考えもあります。

こうしてベースの音を大々的に聴かせることは少なくなり、目立たない楽器になっていきました。

有名なベーシストたち

(1)ジャコ・パストリアス

ジャズバンド、ウエザーレポートのベーシストで、変幻自在なベースが特徴です。メロディラインも積極的に演奏することで、ベースをリード楽器のように扱いました。その一方で、巧みなベースラインをとってバンドに躍動感を与え、ジャコのベースが入るだけでバンドの雰囲気が決定するほど強力な演奏をしていました。



(2)ジャック・ブルース

エリック・クラプトン、ジンジャー・ベイカーと組んだクリームというバンドで名が知られました。この人の特徴は、とにかく手数が多いことです。クリーム時代はギターのエリック・クラプトンよりも音数が多い演奏をすることがありました。ロックのベースに、大きな影響を与えたことで知られています。



(3)ポール・マッカートニー

ビートルズのベースを担当した、世界一有名なベーシストかもしれません。当初はギター担当だったようですが、誰もベースが弾けないのでポールが演奏することになりました。彼の場合は多くの楽器が弾けて、作詞作曲もできるマルチな音楽家なのでベーシストの枠に収まりきれません。



(4)アンソニー・ジャクソン

ザ・ファーストマンと呼ばれるベーシストです。バンドの結成やレコーディングの際に、真っ先に声がかかることからこのように呼ばれています。ジャンルを選ばず演奏が可能で、ジャズバンドからロックバンドまで幅広く活躍しています。彼が入るだけで、音に芯ができるので頼もしい存在です。



(5)タル・ウィルケンフェルド

19歳にしてリーダーズアルバムを発表し、ジェフ・ベックのツアーサポートメンバーに選ばれた才女です。あらゆるジャンルに対応する演奏が可能で、ソロプレイはもちろんのことヴォーカルもできるマルチなプレイヤーです。テクニックも音楽性も優れており、新時代のベーシストとして高い評価を得ています。



(6)TOKIE
あらゆる音楽に対応する多彩なスタイルを持つベーシストです。彼女に関しては別の記事で書いています。



美しいベーシストの多様性 /魅力的なTOKIEの多彩さ

まとめ

目立ちにくいベースですが、ベースの良さはバンドの音全体に影響します。ギターで「上手い!」と言われる人は多いですが、ベースで上手いと言われるのはなかなか難しく、それは単に手先のテクニックではなく、バンド全体をどのように色づけているかが問われるからだと思います。これまで気にしなかった人がベースに注目すると、また違った音楽の楽しみ方ができるのは間違いありません。


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