絶滅危惧種のアウトドアブーツ /ラッセルモカシン
ある一定の年齢以上の人には憧れのブランドですが、あまり知名度が高くないブーツブランドにラッセルモカシンがあります。評価は高いにも関わらず、あまり知名度が高くないのは流通量が少ないので商品を見る機会がある人が多くないからだと思われます。創業100年を超え、未だに手作りで行っているアウトドアブーツの傑作、ラッセルモカシンの紹介です。
ラッセルモカシンの歴史
1898年にウィル・ラッセルの手によって、ウィスコンシン州に設立されました。林業労働者のためのブーツを生産し、これがとても評判になっていきます。そして1920年代にビル・ガスティンという若者が営業社員として入社すると、旅行用シューズを中心に販路を広げてラッセルモカシンの名を広げていきました。1924年にウィル・ラッセルが死去すると、銀行からの融資を得てラッセルモカシン社を買い取りました。
狩猟や魚釣りを楽しむガスティンは、今では定番品として知られる狩猟向けのブーツ「バード・シューター」を発表します。さらにアウトドアを楽しむためのさまざまなブーツを展開し、現在のラインナップのほとんどはガスティンの時代に発案されています。こうしてラッセルモカシンは、アウトドア愛好家の間で高い人気を誇るようになります。
そして現在においても、昔ながらの手作りを続けており、ハイテク素材を使わずに革だけで防水型のブーツを作り続ける稀有なブランドです。
そして現在においても、昔ながらの手作りを続けており、ハイテク素材を使わずに革だけで防水型のブーツを作り続ける稀有なブランドです。
種類
(1)ブーツ
スポーティング・クレイ・チャッカ
ラッセルモカシンといえば、まずこれを思い浮かべる人が多いでしょう。ラッセルの大定番商品です。基本は3アイレット(靴ひもを通す穴3つ)ですが、カスタムオーダーで4アイレットや5アイレットにしている人も多いようです。ハンティングブーツながら、街歩きにも適していて汎用性が高いブーツです。私も一足持っていて、とても重宝しています。
ノックアバウト・ブーツ
犬の散歩などの時に、気負うことなくさっと履いて欲しいという想いからできたブーツで、靴ひももない長靴型です。とても人気が高いブーツですが、靴ひもがないためサイズ選びが最も難しいともいわれています。
この色のスエードは「ララミースエード」と呼ばれて、人気の高い色になっています。
この色のスエードは「ララミースエード」と呼ばれて、人気の高い色になっています。
サファリ・PH
本格的なアウトドアブーツです。狩猟用ブーツとして発売されたようですが、釣りやハイキング等アウトドア全般で人気です。
バード・シューター
かつてのラッセルモカシンの大人気商品で、文字通り鳥撃ち用のブーツです。現在でもスポーツハンティングの愛好家には人気が高いようで、ぬかるんだ湿地や草木が多いエリアに向いているそうです。99年か2000年頃に生産中止になったと言われていましたが、いつの間にか復活しています。
(2)短靴
フィッシング・オックスフォード
こちらも人気の高い商品で、魚釣り用の靴として発売されました。日本では、街履きとして重宝している人の方が多いように思います。
アート・カーター・シューティング・シューズ
世界中を旅しているアート・カーター氏がラッセルモカシンに発注し、そのまま商品として一般に売り出されているモデルです。田中さんがエルメスに注文したバッグが、マレットタナカの名前で売り出されているのと同じことのようです。
世界中を旅しているアート・カーター氏がラッセルモカシンに発注し、そのまま商品として一般に売り出されているモデルです。田中さんがエルメスに注文したバッグが、マレットタナカの名前で売り出されているのと同じことのようです。
特徴
カスタムオーダーを受け付けていて、顧客の要望に応じてさまざまな靴を作ってくれます。アッパーの革の種類やソールの種類だけでなく、細かいところまで様々な注文に応じてくれます。webサイトに掲載されていないことでも、メールで依頼すると「キミの望みを叶えてあげるぜ」的な返信が来ることが多いそうですが、一方でアメリカン企業らしく依頼と違う商品が来るなんてこともあるようです。
履
いた感じとしては、とにかく軽いです。アメリカンブーツの代表格であるレッド・ウイングやチペワなどに比べると、その軽さに驚かされます。スニーカーのように軽快で、堅牢さを兼ね備えたブーツと言えるでしょう。
いた感じとしては、とにかく軽いです。アメリカンブーツの代表格であるレッド・ウイングやチペワなどに比べると、その軽さに驚かされます。スニーカーのように軽快で、堅牢さを兼ね備えたブーツと言えるでしょう。
そして恐らく厚手の靴下(アウトドア用の靴下)を履くことを前提にしているためか、全般的に踵が緩くなっています。これはイギリスのトリッカーズなどにも言えることですが、踵の絞りはほとんどなく、そのためサイズ選びは慎重に行う必要があります。
ヴァンプとは
ラッセルモカシンを語るうえで欠かせない言葉です。簡単に言うと靴の構造で、これによって履き心地や防水性が変わってきます。ラッセルモカシンでは、どのモデルを選ぶかに加えて、ヴァンプの種類も頭を悩ませます。シングル・ヴァンプ
ラッセルモカシンの全てのモデルの基本形です。1枚の革で足を包み込み、水が浸入しにくい構造になっています。最もしなやかで、街履きに適していると言われます。
ダブル・ヴァンプ
シングルバンプに加え、さらに1枚の革を足底から甲にかけて巻いたもので、防水性を高めています。
ダブル・モカシン
シングル・ヴァンプに加えて、モルテッド・ソールと呼ばれるソールが加わります。シングル・ヴァンプの柔らかさと、より堅牢さを加えた造りですが、防水性はダブル・ヴァンプに劣ります。
トリプル・ヴァンプ
ダブル・ヴァンプにダブル・モカシンで使われるモルテッド・ソールを加えたもので、ラッセルモカシンの中で最も高い頑丈さと防水性を備えています。現在は、トリプル・ヴァンプでのオーダーは受け付けていません。
絶滅危惧のメーカー
ラッセルモカシンは、近い将来に廃業するとの噂が絶えません。それは売れないからではなく、職人がいなくなってきているからです。先ほどトリプル・ヴァンプのオーダーができなくなったと書きましたが、これも縫える職人がいなくなったからだと言われています(実際には手間がかかるオーダーを請けないように経営方針を変えているだけともいわれています)。全てを手作業で行うメーカーなので、職人がいなくなれば靴は作れません。しかし現在のアメリカで、靴を作りに一生を捧げたいと思う若者を探すのは困難なのでしょう。後継者の育成問題はずいぶん前からささやかれていましたが、解決の目途はたっていないようです。
まとめ
アウトドアに特化したブランドでありながら、ダナーのようにハイテク(ゴアテックスとか)に頼らず、昔気質のやり方を貫いてきたブランドとしては孤高で稀有なブランドです。古き良き時代の名残を残しつつ、細々とですが生き残ってきました。これからラッセルモカシンを体験する方には、スポーティング・クレイ・チャッカをお勧めします。様々なパンツに合わせることができますし、ラッセルモカシンらしさを十分に堪能できます。見た目のゴツさに反して、軽い履き心地を楽しめますよ。
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