クリームの素晴らしき世界 /名作アルバム紹介03

伝説のバンド、クリームの最高傑作に挙げられるアルバムで、クリームのが1968年に発表した3枚目のアルバムになります。スタジオ盤とライブ盤の2枚組で、当初のレコードは別々に販売されていたようです。クリームというバンドが、なぜこれほどまでに高い評価を受けていのかは、これを聴けばすぐに分かると思います。



クリームとは

人気バンド、ヤードバーズのギターリストとして圧倒的な人気を誇ったエリック・クラプトンはヤードバーズのプロデビュー前に脱退してしまいます。ジョン・メイオールのブルースブレイカーズに参加したクラプトンは、アルバム「ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン」で、後のロックギターの基礎になるさまざまな奏法や音作りを見せ、ギターの神と呼ばれるようになりました。



そのクラプトンにドラマーのジンジャー・ベイカーが声をかけたのが、クリームの始まりです。クラプトンはベーシストにジャック・ブルースの加入を呼びかけ、3人のバンドが誕生しました。バンド名は「最上のもの」を意味するクリームになります。高い演奏力を持った3人は、これまでのロックバンドとは違い、即興演奏を中心に演奏を展開しました。

硬派な演奏スタイルと、その圧倒的な演奏技術、そしてブルースロックとサイケデリックを融合させた独自の世界観で、後のロックバンドに決定的な影響を与えました。

レコーディング

前作に続き、プロデューサーはフェリックス・パパラルディが務めましたが、本作ではスタジオ盤のレコーディングにパパラルディが演奏で加わっています。過去2枚のアルバムに比べ、スタジオ版は実験的な試みが行われています。レコーディング技術が急激に向上している時期でもあり、前2作に比べるとベイカーのドラムがクリアに奥行きのある音で録音されているのが特徴です。



ライブ盤ではフィルモアのライブが収録され、本作に収録しきれなかった音源は「ライブ・クリーム」に収録されることになりました。クリームの絶頂期の演奏が収録されている貴重な記録になっています。

クリームが与えた影響

ステージの緞帳があがり、バンドのメンバーがお辞儀をして演奏を始めるのが、当時のロックバンドのコンサートのスタイルでした。ビートルズもストーンズも、そうやって演奏しています。しかしクリームはステージに勝って気ままに登場して、チューニングを始めていました。チューニングが終わると司会者の挨拶などなしに、いきなり演奏を開始します。こうしたスタイルは、多くのロックバンドが真似をするようになります。



またクリームは大胆な即興演奏を取り入れ、1曲を10分以上演奏することがよくありました。レコードと同じように演奏することが当たり前だった当時のロックバンドとしては異例のスタイルで、高い演奏能力が備わった3人だから可能になったスタイルです。これらはジャズの世界では当たり前に行われており、ベイカーとブルースの2人がジャズバンドに在籍していたことからクリームにとっては自然なことでした。

その後のロックバンドの多くが、クリームを真似て即興演奏をするようになりました。

収録曲

(スタジオ盤)
A面
1.ホワイト・ルーム (White Room)
2.トップ・オブ・ザ・ワールド (Sitting on Top of the World)
3.時は過ぎて (Passing the Time)
4.おまえの言うように (As You Said)
B面
1.ねずみといのしし (Pressed Rat and Warthog)
2.政治家 (Politician) 3」(Bruce, Brown)
3.ゾーズ・ワー・ザ・デイズ (Those Were the Days)
4.悪い星の下に (Born Under a Bad Sign)
5.荒れ果てた街 (Deserted Cities of the Heart)

(ライブ盤)
C面
1.クロスロード (Crossroads)
2.スプーンフル (Spoonful)
D面
1.列車時刻 (Traintime)
2.いやな奴 (Toad)

スタジオ盤は、なんといっても「ホワイトルーム」が最も有名です。クラプトン特有のウーマントーンにワウペダルを使ったスタイルで、この曲は多くのミュージシャンがカバーしました。そして録音技術の進化により、ドラムやベースの音が鮮明に聴こえるようになったため、リズムセクションの怒涛のテクニックが、よりくっきりとわかるようになりました。

ライブ盤ではクラプトンがボーカルをとる「クロスロード」が最も有名です。演奏というよりバトルに近いものがあり、ギターとドラムを押し除けるような手数の多いベースに、クラプトンがこれでもかと力強い、リフを刻み続けていき、怒涛のドラムがその背後から被さっていきます。ハイレベルな自己主張とテクニックが融合し、緊張感のある演奏が堪能できます。

※クロスロード

まとめ

クリームの登場から、ロックバンドは即興演奏をするのが当たり前になっていきました。特にライブ盤を含む本作の影響は大きく、縦横無尽に演奏するスタイルに憧れた人達が70年代のロックシーンを作ることになります。その意味でエポックメイキングなアルバムであり、今なお色あせない名盤といえます。


関連記事:ベガーズバンケット /名作アルバム紹介01
     狂気 /名作アルバム紹介02

コメント

このブログの人気の投稿

アイルトン・セナはなぜ死んだのか

懐中電灯は逆手に持つ方が良いという話

バンドの人間関係か戦略か /バンドメイドの不仲説

消えた歌姫 /小比類巻かほるの人気はなぜ急落したのか

TBSが招いた暗黒時代の横浜ベイスターズ /チーム崩壊と赤坂の悪魔