お祝いに刃物を贈るのはマナー違反という声

バツイチの知人の武井(仮名 45歳)が再婚することになり、お祝いは何が良いかと仲間でワイワイと話し合いを持ちました。そこで出てきたのが、アメリカの有名メーカーのステーキナイフです。武井が以前から欲しいと言っていた一品で、国内ではまず見かけません。そこで海外オークションサイト、eBayで落札することになりました。



武井の人となり

かなりの苦労人で、過去の離婚も聞けば同情してしまう内容です。サラリーマンとして平日は猛烈に働き、土日は釣りやキャンプで過ごすアウトドア派で、お盆には登山もする本格派です。バーベキューが大好きで、肉を鉈でザクザク切って振舞われたことがあります。



そんな武井が周囲の影響で本格的なステーキナイフを欲しがるようになっていました。そんなものを贈ると新婦が迷惑がるのでは?と思ったら、お相手はキャンプで知り合った方で日本アルプスへのアタック経験もあり、ポケットからナイフを取り出すと枝をバンバン切って、あっという間に焚き火を始める人なのだそうです。

「あの人なら、武井と一緒にナイフでステーキ食べると思うぞ」

というわけで、海外オークションをしょっちゅうやっている山中(仮名)に後を託して解散しました。

山中の奥さんの心配

式は5月を予定しているらしいので、それまでにナイフが届けば問題ないので山中は慎重に品定めをしていました。すると山中の奥さんが「結婚式に刃物を贈るのは縁起が悪いので、他のものにした方がいいのでは?」と言い出したのです。理由は「刃物は縁を切る」ことになるからだそうです。そこで再び山中から召集の連絡が来ました。

山中が説明すると、何人かは「聞いたことがある」と言います。私もそんな話を聞いたことはありますが、深く考えたことはありませんでした。そこで意見が分かれてしまいました。

問題あり派の主張

・本人が良くとも、奥様の意思を確認したわけではないから、嫌がられるかもしれない
親戚などから非常識だと思われかねない。
・結果的に問題ないかもしれないが、問題があるかもしれないものを渡すのは避けた方が良い。

問題なし派の主張

・何より武井が欲しがっている。
・アウトドア指向の夫婦にぴったり。
・刃物は縁起が良いもののはずで、縁起が悪いなど初耳。

刃物は縁起が良い?悪い?

婚礼の和装には懐剣(かいけん)が必ず付きます。武家から始まったとされますが、身を守るため、あるいは魔除けとして花嫁は懐剣を持ちました。刃物が縁起が悪いなら、このような風習はなかったでしょう。また七五三でも男の子は5歳になると守り刀(まもりかたな)を持ちますし、誰かが亡くなると無事に極楽浄土にたどり着くためのお守りとして守り刀を胸元に置きます。

※懐剣を持つ花嫁

そもそも刃物は、権威の象徴として天皇や将軍に献上されてきました。日本には刃物を縁起が悪いものとして見る風習はなかったと思います。なぜ「縁を切る」から縁起が悪いと言うようになったのでしょうか?

私の推測

刃物は縁起が良いものとして贈られたり使われたりしていましたが、昭和35年に始まった「刃物を持たせない運動」により、刃物は嫌われるようになりました。社会党の浅沼委員長刺殺事件を経て、警視庁が始めたこの運動は全国に波及していきます。

関連記事:刃物の危険さを知らない人たち

この運動を推進した東京母の会連合会は、刃物の危険性を強力に批判していましたし、当時の資料を見ると子供が刃物を持つことは犯罪者になる一歩だと言わんばかりの主張です。これら刃物への嫌悪感が、刃物を贈るのは縁起が悪いという話につながったのではないでしょうか。

まとめ

私は贈り物のマナーとして、本人が欲しいものなら贈るのは問題ないと思っています。一方で、特に希望もなく無難な贈り物を考える際には、マナーや迷信や風習は気にしておく必要があるとも思います。今回は武井に確認したところ「ぜひ欲しい!」と騒ぎ出し、婚約者は「2セットでお願いします」と自分の分まで欲しいと言っているので、問題ないと思いました。

しかし刃物は縁起が悪いと言うのは、なんとなく違和感があります。縁を切るから縁起が悪いなら、結婚式でケーキカットするのはどうなんでしょうね?



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