日本のドラマがつまらなくなったと思いませんか?

先日、妻が職場の同僚から勧められて日本のドラマを2つほど見て言いました。「つまらない。いつも見ている海外ドラマに比べると、かったるい。。。」何がそんなにダメなのかと聞くと、先が見える安易な展開や、プロの仕事を見せる場面で手際が悪かったり、役者のセリフが棒読みだったりと、あれこれ出てきました。



日本のドラマにも面白いものはありますし、アメリカやイギリスのドラマにもつまらないものはあります。しかしここ10年から20年くらいにかけて、日本のドラマは地盤沈下が続いているように見えます。今回は、それを少し考えてみたいと思います。

つまらない理由1:テーマが限定される

日本のドラマはスポンサーが出す広告料で作られます。そのためスポンサーがつきやすいドラマが多く作られる傾向にあります。恋愛とミステリーが常道で、これなら自動車屋も電話屋も金融機関もスポンサーがつきやすいのです。しかし社会派の重厚なドラマをやるとなると開発による環境破壊は建設会社に、医療問題は製薬会社に、交通事故は自動車会社に敬遠される可能性が出てきます。とにかく多くのスポンサーに多くを集めるため、これらのテーマは扱いにくくなっているようです。

つまらない理由2:難しい話は視聴率が下がる

2002年に日本テレビ系で放送された「私立探偵 濱マイク」は、月曜日の22時という良い時間帯に放送されましたが、視聴率は苦戦しました。毎話ごとに異なる映画監督を迎えて製作する斬新な手法で、従来のドラマよりも作家性が強い仕上がりでした。当時日本テレビが公開していたサイトによると、多くの視聴者が「話が難しい」「突然、怒り出した理由がわからない」「説明が少ないので話についていけない」などと戸惑っていました。

※私立探偵 濱マイク

しかしDVDでレンタルが開始されると、TSUTAYAのレンタルは好調でヘビーローテーションされました。多くのテレビドラマは、ご飯を食べながらなどの「ながら見」をする人が多いので、難しい話は敬遠されるという以前から言われていたことを再確認することになりました。レンタルDVDになると、お金を払っているので真剣に見る人が多いので、多少難しい話でも問題がなかったのです。

つまらない理由3:芸能事務所の影響力

一部のドラマでは、特定のプロダクションに所属するタレントが主なキャストの大半を占めることになっています。その結果、脚本に合っているか、必要な演技力を備えているかに関係なく、事務所が売り出したいタレントが主演や助演を務めることが多くあります。しかし、それでも回っている現状もあり、タレントのファンはドラマの内容よりも目当てのタレントを見られることで満足している面があります。

つまらない理由4:脚本の陳腐化

上記の理由3に関連しますが、人気タレントが出ると物語の中にタレントの見せ場を無理やり挿入することがよくあります。なぜさっきのコミカルなやり取りが必要だったのか、なぜケンカの場面にあの人が割り込んできたのか、なぜ女優の入浴シーンが入ったのか、なぜダンスの場面があんなに長いのかなどなどです。これらのシークエンスが悪いということはないですが、物語のリズムが途切れたり、間延びしたりすることはよくあります。

※手にしているのはレンガではなく携帯電話

多くのドラマでは、携帯電話が通じないという設定は敬遠されるそうです。もちろん携帯電話会社のスポンサーへの配慮です。スポンサーが求めているのかわかりませんが、スポンサーへの配慮があちこちに散見されます。

アメリカの俳優事情

日本とアメリカでは俳優の形態が全く異なります。日本の芸能事務所に該当するのはエージェントになりますが、エージェントは出演交渉や契約交渉、ギャラの交渉を行うだけでマネージメントは行いません。俳優は個人事業主としてエージェントと契約しているので、エージェントから見ると俳優は顧客になります。

そのため芸能事務所によるテレビ局へのバーター出演などはなく、ドラマに出たい俳優は基本的にオーディションを受けることになります。大抵の場合はドラマのディテールが決まり、脚本が固まってから、それにふさわしい俳優をオーディションで選ぶのです。そのため全く無名の俳優がドラマの主役を射止めることも珍しくありません。むしろ無名の役者の方が出演料を抑えられるので、無名で実力のある役者を探すのがオーディションとも言えます。

※ビッグバン★セオリー

日本のドラマでは1話当たりの出演料が、渡辺謙の1話500万円というのが話題になったことがあります。しかしアメリカでは出演料の高騰が製作費を圧迫しており、ドラマ「ビッグバン★セオリー」の主要3人の出演料は1話100万ドル(1億1000万円)になっています。高額すぎるギャラを少しでも抑えるために、ほとんどの場合はオーディションで出演が決まります。

アメリカの製作事情

スポンサーの広告収入が製作費の柱になるのは、日本もアメリカも変わりません。違うのは収益モデルです。日本では再放送料とDVDの売り上げが収益の柱になりますが、アメリカではそれに加えて海外への配信が大きく影響します。人気ドラマになれば数十か国で放送されることになり、その放送料は莫大に膨らみます。それに比例して各国での再放送、DVD販売売上が入るので、成功したドラマの収益は天文学的になります。

※大ヒットドラマ「ディス・イズ・アス」

そのためパイロット版(たいていの場合は第1話)の製作費が3億円を超えることもあり、この額は日本の映画の平均的な製作費と同額になります。つまり邦画1本の製作費を1時間のドラマに詰め込んで毎週放送するわけです。これはハイリスクなギャンブルになります。そのため視聴率が落ちると演出家の入れ替え、脚本家の入れ替え、脇役の入れ替え、時には主演俳優の入れ替えも行われます。それでもダメなら話の途中であっても、打ち切りになります。赤字のまま続けられないほどの製作費が投入されているからです。

まとめ

ステレオタイプな分け方になりますが、タレント中心に作られているのが日本のドラマで、企画中心に作られているのがアメリカのドラマだと思います。どちらも視聴率は大事ですが、アメリカの方が製作費が膨大なため、よりシビアに視聴率を見ています。

日本のドラマのダメな点を羅列しましたが、「半沢直樹」のように割と重いテーマを使いつつ、流行の先端を行くタレントを使わなくても大ヒットした例もあります。反対にアメリカのドラマのダメな点は、クリフハンガー(物語を宙ぶらりんにして「つづく」で終わらせること)であっても、容赦なく打ち切りがあることです。

日本のドラマは製作費が安いから海外ものにかなわないという指摘がありますが、私は同意できません。上記に挙げたダメな点は製作費があっても受け継がれるでしょうから、人気があっても演技の実力がないタレントはどんどん使われるでしょう。テレビ朝日の「相棒」は、製作費がないため劇団出身の実力ある安い俳優で脇を固めて成功しました。面白い脚本とそれに見合った俳優が揃えば、そこそこ面白いドラマは作れると思うんですがどうでしょう。



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