ブラックラグーン /娘が人生を変えたというアニメ
私が英語の練習のため、外国人とチャットで頻繁に会話をしていた時期があります。日本のアニメが大好きなカナダ人が「ブラックラグーンってアニメ知ってる?続きが気になってるんだけど、日本では放送されてるの?」と聞いてきました。私はそのアニメを知らず、ネットで検索をかけてYouTubeにアップされている映像を眺めました。これが娘に言わせると、娘がオタク化する第一歩だったようです。
ガンアクションを中心にした物語で、理不尽な暴力と下品なネタが散りばめられています。警察や教会も含めて登場人物の大半がゲスな人種で、騙し会いや裏切りは日常茶飯事です。その中で殺される側や騙される側が、間抜けだという価値観の世界になっています。
ロアナプラをアジトにするロシアン・マフィアのホテル・モスクワ、香港マフィアの三合会などの悪党の巣窟の中で、ロックは次第に悪党の矜持と葛藤しながら生きていきます。
親としてはパスワードを知られているのは不覚でしたが、娘は興奮して「面白い」を連発して影響されていきます。気の利いた言い回しや言葉遊び、大げさな比喩やテレビや小説ネタの引用などが面白いと思ったようで、何度もセリフを真似していました。聖書の引用による皮肉、アメリカのテレビ番組からの引用、B級映画のオマージュなどは理解できませんでしたが、セリフまわしの軽妙さと無駄にハードボイルドを気取る雰囲気が、面白かったみたいです。
とにかく年齢に不釣り合いな過激なアニメを見たことで、こんな世界があったのかと子供向けアニメではないものも自分から探して見るようになりました。
「戦いの太鼓(タムタム)を響かせて、ナヴァホのように襲撃するのさ。」
「アニー・オークリーみてぇだろ?」
「カラミティ・ジェーンはあの酒場じゃ死んでない。」
「OK牧場の決闘をこんなところでやらかしたというわけか」
「おまけにどうやら、俺にはトントすらいないらしい。だが、この子だけは残った。だから俺はローン・レンジャーになるしかないんだ」
「オプラ・ウィンフリー・ショーを見ていると言ても信じねえだろうよ。・・・正解は、銃声の後で・・・だ。」
「せっかくだからボブ・サゲットをボスにすえればよかったのに」
「あたしゃ希代のトリックスター、ガリヤラの湖上を歩く男に仕えてンだ。」
「そこの不信心者どもを、ベテシメシの連中と同じ目に遭わせてやらなくちゃね。」
このようにB級のハードボイルドのようなセリフが所狭しと並び、元ネタを知らなければ何を言っているかわからないことも多くあります。
主人を殺されて復讐を誓ったロベルタの正義、父を殺されロベルタを止めるためにやってきたガルシアの正義、米軍のキャクストン少佐の正義は、それぞれが正しいように見えます。しかし別の面では身勝手な理屈であり、他者の命を軽んじている面がありました。また、なんとかみんなを無事に帰したいと願ったロックは、大勢を生還させることに成功したものの、最後に悪党の烙印を押されてしまいました。
関連記事:アニメ「ブラックラグーン」に見る正義
ロシアン・マフィアのバラライカは部下に対する情を見せるものの、冷徹で残忍で狂暴ですし、香港マフィアの張は腹の中で何を企んでいるのかわからない怖さを備えています。マニサレラ・カルテル(南米マフィア)、コーサ・ノストラ(イタリアマフィア)の面々にいたっては、下品で狂暴で汚い面ばかりが出てきます。魅力的なキャラが揃いつつ、感情移入がしにくいのが本作の特長ではないでしょうか。
しかし痛快なアクションが続くアニメであり、後味の悪い終わり方をすることも多いのですが、不思議と後を引かずに続きを見られます。連載を待ち続けているファンが多いのも納得できるアニメです。
ブラックラグーンとは
原作は2002年から月刊サンデージェネックスで連載されているマンガで、長期休載を挟みつつ現在も続いているのか作者が放棄したのかわからない状態が続いています。2006年から2期に渡ってアニメが放送され、海外でも配信されていたようです。ガンアクションを中心にした物語で、理不尽な暴力と下品なネタが散りばめられています。警察や教会も含めて登場人物の大半がゲスな人種で、騙し会いや裏切りは日常茶飯事です。その中で殺される側や騙される側が、間抜けだという価値観の世界になっています。
あらすじ
日本の旭日重工に勤めていた岡島緑郎は、仕事中にタンカーをシージャックされ拉致されます。拉致したのはタイのロアナプラを本拠地にする運び屋のラグーン商会で、岡島は会社に見捨てられ孤立します。旭日重工が派遣した傭兵会社に襲われ、その危機を乗り越えるのに一役かった岡島は、ロックと名付けられてラグーン商会に参加しました。※ラグーン商会の面々 |
ロアナプラをアジトにするロシアン・マフィアのホテル・モスクワ、香港マフィアの三合会などの悪党の巣窟の中で、ロックは次第に悪党の矜持と葛藤しながら生きていきます。
娘が受けた衝撃
私のiPadのパスワードをいつのまにか知った娘は、勝手にiPadを使ってYouTubeを見ていました。その時に「あなたへのおすすめ」の中に、再生履歴があるブラックラグーンを見つけて再生したそうです。娘は当時4歳で、幼児が見てはいけない暴力と下ネタと中二病丸出しの世界観に触れました。そして夢中になってアップされているブラックラグーンの動画を一通り見たようです。親としてはパスワードを知られているのは不覚でしたが、娘は興奮して「面白い」を連発して影響されていきます。気の利いた言い回しや言葉遊び、大げさな比喩やテレビや小説ネタの引用などが面白いと思ったようで、何度もセリフを真似していました。聖書の引用による皮肉、アメリカのテレビ番組からの引用、B級映画のオマージュなどは理解できませんでしたが、セリフまわしの軽妙さと無駄にハードボイルドを気取る雰囲気が、面白かったみたいです。
とにかく年齢に不釣り合いな過激なアニメを見たことで、こんな世界があったのかと子供向けアニメではないものも自分から探して見るようになりました。
引用の多い独特のセリフ回し
普通に口にすれば恥ずかしくなるようなセリフが飛び交いますが、映画の吹替のような印象を受けます。比喩が多用され、元ネタを知らなければ何を言っているのかわからないことが多々あります。西部劇が元ネタのセリフの例
「部下はこぞって艦長の仇を撃ちにはせ参じ、その結果が『アラモの砦』さ。」「戦いの太鼓(タムタム)を響かせて、ナヴァホのように襲撃するのさ。」
「アニー・オークリーみてぇだろ?」
「カラミティ・ジェーンはあの酒場じゃ死んでない。」
「OK牧場の決闘をこんなところでやらかしたというわけか」
「おまけにどうやら、俺にはトントすらいないらしい。だが、この子だけは残った。だから俺はローン・レンジャーになるしかないんだ」
テレビ番組が元ネタのセリフの例
「ええ、理解なんてされないでしょうよ。朝から晩まで銃いじくっているか、NYPDブルー見て、暇つぶしているような人間にはね!」「オプラ・ウィンフリー・ショーを見ていると言ても信じねえだろうよ。・・・正解は、銃声の後で・・・だ。」
「せっかくだからボブ・サゲットをボスにすえればよかったのに」
宗教が元ネタのセリフの例
「神は留守だよ。休暇取ってベガスに行ってる」「あたしゃ希代のトリックスター、ガリヤラの湖上を歩く男に仕えてンだ。」
「そこの不信心者どもを、ベテシメシの連中と同じ目に遭わせてやらなくちゃね。」
このようにB級のハードボイルドのようなセリフが所狭しと並び、元ネタを知らなければ何を言っているかわからないことも多くあります。
悪党の矜持
犯罪者の巣窟ロアナプラで、それぞれが生きるための矜持を持っています。物語の特徴として、生きることに執着する者が死ぬ傾向が強く、死を拒まないものが生き残っています。この悪党の矜持の大半はB級アクション映画に出てくるセリフのようなもので、やや間抜けな雰囲気すら備えているものもあります。その一方で、2度目のロベルタ編(メイド編)で語られる正義の定義はちょっとした議論になりそうなテーマを持ち出しています。主人を殺されて復讐を誓ったロベルタの正義、父を殺されロベルタを止めるためにやってきたガルシアの正義、米軍のキャクストン少佐の正義は、それぞれが正しいように見えます。しかし別の面では身勝手な理屈であり、他者の命を軽んじている面がありました。また、なんとかみんなを無事に帰したいと願ったロックは、大勢を生還させることに成功したものの、最後に悪党の烙印を押されてしまいました。
関連記事:アニメ「ブラックラグーン」に見る正義
感情移入しにくいキャラ
主人公のロックは不通の日本人なので当初は感情移入しやすいキャラでしたが、徐々に人の命をチップにしたギャンブルを楽しむかのような面が見えてきて、後半に入るにつれ感情移入が難しい面が出てきます。ヒロインのレヴィは短気でキレやすく、自己中心的で人を殺すことを楽しんでいる節があります。当初のレヴィは感情移入しにくいのですが、後半に入るにつれてロックに対する心境の変化が訪れると、見ている側もレヴィに感情移入しやすくなっていきます。ロシアン・マフィアのバラライカは部下に対する情を見せるものの、冷徹で残忍で狂暴ですし、香港マフィアの張は腹の中で何を企んでいるのかわからない怖さを備えています。マニサレラ・カルテル(南米マフィア)、コーサ・ノストラ(イタリアマフィア)の面々にいたっては、下品で狂暴で汚い面ばかりが出てきます。魅力的なキャラが揃いつつ、感情移入がしにくいのが本作の特長ではないでしょうか。
充実した声優陣
B級映画の吹替を見ているようなアニメと書きましたが、それを意識してか声優陣は吹替の仕事も多くこなしている人が揃っています。ロック:浪川大輔
「E.T」や「ネバー・エンディング・ストーリー」などの吹替を子供時代から行ってた、超ベテラン声優です。「ロード・オブ・ザ・リング」で主人公の声を担当したことでも有名です。レヴィ:豊口めぐみ
アニメでは「鋼の錬金術師」のウィンリィや「いちご100%」で有名ですが、「ニキータ」や「みんな私に恋してる」などの洋画の吹替経験も豊富な方です。ダッチ:磯部勉
ジョージ・クルーニー、ハリソン・フォード、チョウ・ユンファなどの声を担当し、映画ファンならすぐにわかる声です。アニメでは「ヨルムンガンド」のブックマンなど、渋い声を担当しています。ベニー:平田広明
「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズで、主人公のジョニー・デップ演じるジャック・スパロウの声を担当していました。アニメでは「ワンピース」のサンジが有名です。バラライカ:小山茉美
「ドクター・スランプ」の則巻アラレで有名な大物声優です。吹替ではシャロン・ストーン、キム・ベイシンガー、ミシェル・ファイファーの声を担当し、報道番組「報道ステーション」ではナレーションも務めています。張:森川智之
長年トム・クルーズの声を担当しています。トム・クルーズから絶賛され公認を受けた声優で、キアヌ・リーブスやブラッド・ピットなどの声も担当しています。冷淡な役を得意としつつ、アニメでは「スラムダンク」や「ワンピース」など幅広く活動しています。まとめ
過剰な暴力が続き、人の命をなんとも思わない人ばかりが出てくる物語で、道徳観が私たちが住む世界とは全く異なるために、子供には絶対に見せたくないアニメです。しかし大人が見せたくないものの方が面白いと感じる子供が多いのも事実で、私の娘は大好きになってしまいました。正直、中学生の今でも子供に見せたくない過激なアニメですが、いつの間にか何回も見返して台詞まで覚えてしまっています。しかし痛快なアクションが続くアニメであり、後味の悪い終わり方をすることも多いのですが、不思議と後を引かずに続きを見られます。連載を待ち続けているファンが多いのも納得できるアニメです。
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