日本映画と海外マーケット /邦画の制作費が安い理由

※この記事は2017年2月21日に、前のブログに書いた記事の転載です。

以前、日本で映画を作っても利益を出すのが難しいので製作費も安くなるという話を書きました。ではどうしてアメリカや中国、韓国に比べて製作費が安いのでしょうか?それを少し考えてみたいと思います。ちなみに韓国映画の平均製作費は60億ウォン(6億円弱)、中国の平均額はよくわかりませんが、大作映画とされる製作費の下限が1億元(16.6億円)なので、平均は10億円前後と言われています。

※中国映画「女帝」の一場面

前回の記事:日本の映画はなぜ製作費が低いのか





製作費の安さは、興行収入の低さに原因があると前回書きましたが、アメリカや中国の製作費の高さは興行収入が高いからです。「バットマンVSスーパーマン」は2016年の日本で興行収入が18億円でしたが、全世界で850億円以上の興行収入を叩き出しています。製作費が250億円以上かかっていますが、これなら大きな利益が出ているはずです。



ハリウッドは世界最大の映画史上のアメリカで公開され、さらに外国での公開が多いので、ふんだんに製作費をかけることが可能です。韓国も同じで、韓国のマーケットは小さいですが中国での人気が高いので多くの製作費をつぎ込むことができました(昨年、中国政府は韓国のメディアの上映や演奏を禁じたので、状況が変わりそうです)。そして中国は急成長する市場を自身で抱えているのが大きいようです。さらに東南アジアへの輸出も熱心にやっています。中国は輸出のため、他国との合作という手法を多く採用しているのも特徴です。

※韓国映画「オールドボーイ」はアメリカでリメイクされました。

つまり映画は自国に巨大なマーケットがあれば有利で、さらに輸出もできればさらに有利になるわけで、その両方をできているのがアメリカというわけです。自国のマーケットが小さい韓国は輸出し、中国は熱心に自国のマーケットを成長させつつ輸出も行っているわけです。では日本はどうなのでしょうか?日本は映画のマーケットとしては、世界第2位の巨大マーケットなのです。そのため、韓国などに比べると格段に有利な立場にあると言えます。

自国に巨大なマーケットがあるという利点が、現在は悪い方向に向いていると思います。自国に巨大マーケットがあるということは、積極的に輸出する必要がないということで、いわゆるガラパゴス化した映画が増えていきました。演技力や脚本に合った配役かよりも、その時点で人気があるタレントを起用するのも、その一例です。そしてそれが多額の利益を生み出せばよいのですが、国内でも今ひとつ通用しなくなったのが現在の姿です。

※「リング」は海外でも高評価でした。

リスクが高く、出資者が減ったために生み出されたのが製作委員会制度で、現在の邦画の多くがこの方式を採用しています。複数の出資者が集まることでリスク分散ができますが、出資者が増えるということは口を出す人も増えるということで、それぞれのスポンサーは例えば自社のCMに出ているタレントの映画の出番が少ないと不満を言ったりします。映画によっては、監督は撮影や演技指導どころか現場の調整係になっているという話も聞こえてきます。もっともどこまでが本当かはわかりませんが。

製作委員会の弊害が指摘されだしてしばらく経ちますが、昨年は東宝が「シン・ゴジラ」で製作委員会制度を使わずに自前で資金を用意して、大ヒットするということも起こりました。日本は巨大なマーケットを持っているのですから、やり方によっては大きく化ける可能性も秘めています。本来はアメリカに次いで映画大国であっても、おかしくない国なのですから。




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