日本の映画はなぜ製作費が低いのか

※この記事は2017年1月15日に、前のブログに書いた記事の転載です。

邦画の製作費の平均額は3.5億円で、「マッドマックス 怒りのデスロード」は3分あたり4億円の製作費が使われている。昨年、映画評論家の町山智浩氏のこんなツイートが話題になりました。邦画の製作費はハリウッドに比べると低いのはもちろん、中国や韓国に比べても低くなっています。なぜこんなに貧乏なのでしょうか?






製作費が少ないのは、単純に利益が少ないからです。大儲けできるなら出資者もドンと投資しますが、損をする可能性が高いと出資したい人は減ります。映画の利益には興行収入という言葉がよく使われますが、興行収入とは映画館でお客さんが払ったチケット代の合計を指します。しかし製作側の利益は配給収入という言葉で表されます。

配給収入=興行収入-映画館の取り分

映画館の取り分は映画によって異なりますが、40%~50%と言われています。さらに配給収入からそれぞれの映画館にフィルムを渡すためのプリント代がかかります。そして宣伝費もかかります。ややこしいので、例を出しましょう。あなたが10億円を出資して映画を作ったとします。興行収入は20億円の中ヒットでした。



映画会社の取り分が40%として8億円です。20億円-8億円で12億円が配給収入です。さらにこの映画は全国500の映画館で上映されました。プリント代が40万円として40万円×500=2億円のプリント代がかかりました。さらに宣伝費としてテレビCMを全国放送で打ち、1億円ほどかかりました。

20億円-8億円(映画館)-2億円(プリント代)-1億円(宣伝費)=9億円

9億円が製作側の収入です。あなたは10億円出資したので、1億円を損したわけです。20億円の興行収入で全く利益がでなかったことになります。ここからテレビの放映権料やDVDの売上げで、元をとれるかどうかって感じですね。では20億円の興行収入というのはどのくらいのヒットかというと、2016年の20億円ぐらいから下の興行収入の映画を並べてみたいと思います。



デスノート 東出昌大主演 21億円
64-ロクヨン(前編) 佐藤浩市主演 19億円
母と暮せば 吉永小百合主演 19億円
バットマンVSスーパーマン ベン・アフレック主演 18億円
インフェルノ トム・ハンクス主演 17億円
ちはやふる-上の句 広瀬すず主演 16億円
スーサイド・スクワッド ウィル・スミス主演 15億円
ジェイソン・ボーン マット・デイモン主演 14億円
四月は君の嘘 広瀬すず主演 13億円


※東出昌大主演の「デスノート」

こうして見ると、20億円の興行収入を得るのも、かなり難しいことがわかると思います。そしてこれらの興行収入を見ると、邦画の製作費の平均額が3.5億円というのもうなづけると思います。ここに挙げた映画の宣伝費は、おそらく1億円程度じゃないはずですしね。ちなみに昨年の興行収入1位は「君の名は」で、200億円を突破しています。いかに凄まじい大ヒットかというのが、これからもわかると思います。



20億円のヒットも大変となると、ハリウッドのように100億円単位で製作費をかけるどころか、中国のように10億円をかけるのもリスキーです。ではアメリカや中国とは何が違うのか?という話は、また別の機会にしたいと思います。



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