大ヒット映画「ターミネーター」で、シュワルツェネッガーはターミネーター役をやりたいわけではなかった。そんな製作の裏話をまとめてみたいと思います。
「ランボー2」の失望
ハリウッドで駆け出しの脚本家だったジェームス・キャメロンは、「ランボー2」の脚本を執筆し、シルベスター・スタローンに徹底的にリライトされて失意に沈んでいました。上映された「ランボー2」は、キャメロンが書いた脚本とは似ても似つかぬものに変わっていたのです。ですから次は自分で監督をやることに決めていました。
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※ランボー2は好戦的な内容になっていました。 |
監督へのこだわりとシュワルツェネッガー
新作の脚本には自信があり、多くのスタジオが興味を持ってくれました。しかしキャメロン自身が監督するとなると、二の足を踏みます。それでも「ランボー2」の二の舞になりたくなかったキャメロンは、低予算でも自分を監督として使ってくれるスタジオに脚本を売ることを決めました。これによりキャメロンの新作「ターミネーター」は、あまり有名ではないスタジオの出資で製作されることになります。
スタローンの筋肉マッチョな映画スタイルに嫌気がさしていたキャメロンは、ターミネーターを猫のようにしなやかなロボットとして描いていました。そして立ち向かう善玉のカイル・リース役には、一見弱そうに見える寡黙な役者が理想的でした。しかしカイル役のオーディションにやってきたのは、アーノルド・シュワルツェネッガーというスタローンに負けず劣らずの筋肉役者でした。
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※最終的にカイル・リース役に決まったマイケル・ビーン |
キャメロンをがっかりさせたのは、筋肉だけではありません。キャメロンが苦手な葉巻をブカブカ吸い続け、寡黙どころかお喋りで聞いてもいないことまで延々としゃべり、さらに致命的なことに英語が下手でした。オーストリアからやってきたシュワルツェネッガーは、英語の勉強中だったのです。キャメロンの理想とするカイル・リース像から最も遠いところにいるシュワルツェネッガーに、任せるわけにはいきませんでした。
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※若いころのアーノルド・シュワルツェネッガー |
後日、断りの電話を入れるつもりだったキャメロンですが、夜になってふとシュワルツェネッガーの顔を思い浮かべ、ゴツゴツした骨格がロボットぽいことに気がつきます。彼の似顔絵を描いて、半分を機械にしてみると意外に絵になります。猫のようにしなやかなターミネーターをやめて、ロボットちっくなターミネーターにすれば、シュワルツェネッガーは面白いかもしれないと考えたのです。それにターミネーターはほとんど喋らないので、英語が下手でも問題ありません。
さっそくキャメロンはシュワルツェネッガーに電話を入れ、カイル・リース役は無理だがターミネーター役ならOKだと伝えます。しかし生意気にもシュワルツェネッガーは悪役は嫌だと言い出します。「いや、お前の英語じゃ無理」とか「お前の体はデカすぎ」とか言ったかどうかは知りませんが、なんとかシュワルツェネッガーを説き伏せて、ターミネーター役に納まりました。
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※セリフが少なく無表情な役でした。 |
大方の予想を覆す大ヒット
ちなみに、この映画でシュワルツェネッガーの代名詞となった台詞「I'll be back」(また来る)に関して、シュワルツェネッガーは「I'llと短縮するのは女性っぽいから、I willにするべきだ」という謎の抵抗をして、キャメロンを困らせています。彼がまだ英語に馴染んでいなかったことを示すエピソードです。
ロケ期間2週間の低予算映画「ターミネーター」は予想外の大ヒットになり、シュワルツェネッガーをスターダムに押し上げると同時に、キャメロンも有名監督の仲間入りを果たしました。シュワルツェネッガーにとって意外だったのは、善玉のカイル・リースを演じたマイケル・ビーンよりも人気が出たことでした。キャメロンとシュワルツェネッガーは互いにスター街道を進み、ターミネーターの続編の話が出たときに、両者は前作でできなかったことを果たそうと決めました。
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※チープな特撮でしたが誰も気にしませんでした。 |
「ターミネーター2」も大ヒット
こうして「ターミネーター2」には猫のようにしなやかなターミネーターが登場し、シュワルツェネッガーは善玉として登場しました。当初の両者の願いが、これで叶ったのです。ターミネーターの設定が逆転し、こちらも大ヒットしました。
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※念願かなって続編では善玉役でした。 |
2人は再び組んで「トゥルーライズ」というアクションコメディで大ヒットを飛ばしますが、この続編が911テロで流れたのが今も残念です。
※1作目ではガーゴイルズ社のサングラスが使われました。このモデルとは異なります。
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