3分でわかる山口組分裂騒動

指定暴力団の山口組が分裂し、神戸山口組、任侠山口組の抗争が懸念されています。2017年9月12日には、任侠山口組の代表が襲撃され、ボディガードが死亡しています。何がどうなって、こんなことになったのでしょうか?


ざっと流れを書いたので、ニュースを見る際に役立てば幸いです。

山口組とは

神戸に本拠地を置く暴力団で、純粋な組員は100人程度の組織です。しかしその組員が全国各地の暴力団の組長や代表で、それら直系組織の人数を合わせると、構成員が14000人を超える日本最大の暴力団です。


神戸港の港湾労働者だった山口春吉が、1915年に50人の仲間と立ち上げた組織で、港湾労働者の手配を主な仕事にしていました。

ヤクザ界最大のスーパースター

戦後すぐの1946年に田岡一雄が三代目組長に就任すると、抗争と巧みなビジネス手腕で一気に全国に勢力を拡大していきます。田岡の就任時は30名程度だった山口組は、一気に1万人を超える巨大組織へと成長しました。


田岡は組員に対して、裏稼業だけでなくまっとうな仕事を持つことを推奨し、自身は芸能プロダクションに力を入れていきました。田岡が設立した神戸芸能社には、美空ひばりを筆頭に、三波春夫里見浩太朗田端義夫橋幸夫などが名前を連ねます。田岡は暴力団組長として裏の世界に君臨すると同時に、表の世界でもやり手のビジネスマンとして君臨しました。

田岡は大阪戦争で暴力団同士の抗争に勝ち抜き、さらに警察の山口組撲滅を目的とした「頂上作戦」からも組を守り抜き、表稼業、裏稼業を合わせて莫大な利益を得ることに成功しました。

田岡は最も成功したヤクザで、その人生は多くの物語のモデルになりました。田岡を主役にした映画も何度も製作され、田岡の強い希望で懇意にしていた高倉健が田岡を演じています。田岡の臨終に立ち会ったのも、高倉健でした。

山一抗争

スーパースターの田岡が病気で指揮をとれなくなると、山口組では幹部らによる集団指導体制に移行します。そして田岡が亡くなると、四代目の襲名が問題になりました。スーパースターの後釜など、誰にも勤まらないのが明白だったからです。

田岡の引退から3年の月日を経て、四代目の組長が決まりました。しかしこれを不服とした人達が、山口組を離脱して一和会を結成します。一和会の人数は山口組を超える人数となり、山口組四代目組長の竹中正久が射殺されると、山口組対一和会の抗争、山一抗争が勃発しました。

山一抗争は家田荘子のルポルタージュ「極道の妻たち」に描かれ、さらに何度も映画化されました。

※映画「極道の妻たち」の一場面

21世紀の山口組

山一抗争に勝利した山口組は、主力組織の山健組の組長だった渡辺芳則が5代目に就任します。1989年に就任した渡辺は、神戸震災の際には救助活動を指揮し、ヤクザが人助けをしたと海外でも話題になりました。しかし2004年には体調不良となり、組長を引退することになります。

そして6代目に、現在の組長である司忍(つかさ しのぶ)が就任します。この就任にはクーデターがあったという噂もあり、前組長の渡辺は山口組から追放されています。渡辺の手法に不満を持っていた組員も多かったらしく、そういった勢力が司忍を中心に動いたとも言われていますが、真相はわかりません。

※6代目組長の司忍(本名:篠田建市)

山口組の移転問題

これまで山口組は本拠地神戸のヤクザが組長を務めてきましたが、司は名古屋を本拠地にする弘道会の組長でした。そのため司は山口組の本拠地を名古屋に移転させる意向を示し、山健組などから強い反発を受けていました。

山口組の名古屋移転は、例えるなら阪神タイガースの本拠地を名古屋にするような話だそうで、驚きや反発が当然のように起こります。しかし司忍は、山健組主導の山口組から弘道会主導に切り替えようと、改革を行います。当然ながら不満が溜まっていきました。

山健組の離脱劇

2015年9月に、山健組を中心に離脱が始まり、彼らは神戸山口組を結成しました。山健組の離脱はネットでは「ハロープロダクションから、モーニング娘。が離脱したようなもの」と例えられていて、衝撃の大きさが伺えます。三代目田岡の時代から、山口組の主力組織だった山健組は、こうして山口組から姿を消しました。そして山口組と神戸山口組の間で、関係者が襲撃される事件が頻発し、警察は抗争状態と認定しています。

弘道会ばかりが重宝される山口組に嫌気がさして、神戸山口組が結成されましたが、神戸山口組内では山健組ばかりが重宝されるという不満が出てきました。山健組以外の組員からすると、組織の中心が弘道会から山健組に変わっただけで自分たちがないがしろにされているのに変わらないという不満が高まりました。こうして神戸山口組の一部が2017年に離脱して、任侠山口組を結成しました。現在では山口組は3団体に分裂し、それぞれが抗争状態にあります。

まとめ

暴力団の抗争は基本的にお金が絡みます。暴対法の施行以降、暴力団はシノギ(収益を得るための手段)に苦しんでいます。

かつて田岡雄一は、若い衆からうどん一杯をご馳走になるのも拒否し、上納金以外は全く受け取らなかったと言います。しかし最近では、組長の妻がブティックを始めると、傘下の組員はそこで買い物をしなくてはらなかったり、組の事務所で使う備品を購入しなくてはならなかったりと、上納金以外の支出が増えているといいます。これらの不満が高まり、クーデターや分裂の原因になっていると言われています。

シノギに困った暴力団は、従来の薬物販売やオレオレ詐欺などから、さらに市民に入り込んで収益を上げようとしてくるでしょうから、私たちはこういった暴力団への資金提供になるようなことに、注意を払わなくてはいけないと思います。



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