プロジェクトの成功

※こちらは以前の「はねもねの独り言」に書いていた記事です。

少し前に読んだ記事にNHKが放送していた「プロジェクトX~挑戦者達~」に関して書かれたものがありました。「プロジェクトX」は、戦後の日本の開発プロジェクトを追ったドキュメンタリーで、新幹線や飛行機の開発などを中心にさまざまな苦難を乗り越えていった姿が描かれています。昭和の美談として語られることが多い物語ですが、この記事では「プロジェクトX」で紹介されている事例の多くが失敗事例だと書いていました。


この番組では企業が、新製品の開発に着手するもさまざまなトラブルに直面し、時にはプロジェクト中止の危機に直面しながらも無名の社員やリーダー達が執念に満ちた粘り強さを見せて製品が完成してハッピーエンドになるというパターンが多くありました。どんな危機に直面しても絶対に成功させるという意志を持った人達が、苦しい中で時にはアイデアを搾り出し、時には会社を説得するなどして成功させる姿は、子供に見せたい番組という評価を受けていました。

しかしこの記事で指摘されていたのは、そもそも予定よりも大幅に遅れたり予算を超過するようなプロジェクトは失敗だということです。失敗プロジェクトを粘り強く続けて、なんとか完成に漕ぎ着けたものを「素晴しい」と賞賛するメンタリティは危険だとしていました。確かに予想できない問題に直面した時には、どうやって問題を解決するかと同時にどうしてこのような問題が予見できなかったのかという反省が必要になります。

言われてみると「プロジェクトX」で紹介された事例の中には、成功したからまだよかったものの長時間の残業や休日出勤が常態化するデスマーチになっているものも多く、失敗していたら会社の経費と労働時間を浪費したあげく社員を疲弊させただけの大バカヤローになっていた可能性もあります。これらの事例を「終わりよければ全てよし」と考えるのは、確かに危険かもしれませんね。当時は開発に迫られる時間も今ほどヒステリックに短くはなかったでしょうし、なにかあると株主が大騒ぎするようなことはなかったでしょうからね。

成功するプロジェクトというのは、やっている当人達はハラハラの連続であっても外から見ると計画通りにスイスイ進んでいるでしょうし、大問題に発展するようなものにしても先に予見して予防措置をとるので終わってみると些細な問題があった程度の印象しか残らないかもしれません。かつてサッカーのゴールキーパー川口能活が、ファインセーブをした試合は基本的に失敗で、本当に上手くいった試合はディフェンダーと連携がとれてシュートコースを消したりシュートが打てない状態に追い込むので、キーパーがほとんどボールに触れないと言っていました。だからファインセーブもなくて「今日の試合は楽でしたね」なんて言われると、本当にガックリくるのだそうです。

翻って自分の仕事を見ると、デスマーチ予備軍もいくつかあるので今のうちに検証しなくちゃいけないですね。汗をかいて満足しているようじゃダメなんですよね。





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COMMENT:
AUTHOR: TT
DATE: 02/13/2011 23:48:41
昨年末、少しお邪魔させていただいたTTです。遅い挨拶となりますが、今年もよろしくお願い致します。

「プロジェクトX」で取り上げられた人々の熱意と努力は賞賛に値すると思いますが、プロジェクト管理という点からは、なぜ想定通りに進行しなかったのかという視点は常に持たなければならないですよね。現場の努力(犠牲)によって、一応の問題解決を図る。とても日本的なこのやり方では(決して悪い面ばかりとはないと思いますが)、より本質的な問題を見逃してしまい、結果として大きな破綻を招いてしまいかねないですから。

太平洋戦争関連の書籍でも、10年ほど前に、○○すれば日本は勝てたという類の主張が目立ったことがありますが、ほとんどは国家体制を含めた本質的な課題(組織論等)から目を逸らしたものばかりということもありました。どうも、日本人は体系的、統計的に課題に取組むことが苦手なのかもしれないと思うことがあります。無論、景気のいい主張が目立つだけかも知れませんが、紹介されている書籍のようにきちんとした分析した冷静な主張よりも、景気のいい主張の方が受けがいい現状は、もう少し、どうにかならないかなとも思います。

話は変わりますが、去年、多くの方から注目されたJAXAの「はやぶさ」も「失敗」をしているプロジェクトですよね。川口マネージャを中心としたスタッフの献身によって、地球帰還、小惑星物質の回収という最大限の成果を得ることができましたが、数々のトラブル発生はプロジェクトが想定通りに進まなかったためですから。特に技術開発の世界で予期しないトラブルが発生しやすいものという点を踏まえつつも、次回以降の同種プロジェクトでのトラブル低減に向けた取組も必要になると思います(JAXAでは、この点も十分に理解しつつ、各種の次期プロジェクトを進められていると思いますが)。

でも、もし「はやぶさ」が未帰還となったら、レンホーさんは、得意顔になって仕分けショーで「JAXAの無駄を削減しました」と吹聴していたのだろうかと思うと、本当に帰還できてよかったと思います。

長文、失礼しました。

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COMMENT:
AUTHOR: はねもね
DATE: 02/15/2011 14:16:39
★TTさん
こちらこそ、今年もよろしくお願いします!

確かに「はやぶさ」も失敗プロジェクトですね。無事帰還できたのは、スタッフの並々ならぬ献身的な働きぶりや運に恵まれた面もあると思います。そして「はやぶさ」が帰還できなければ、得意げに予算削減を振りかざされていたことでしょう。そして失敗というのは挑戦した人しか得られない財産ですから、これを財産に次回につなげて欲しいですね。

成功も失敗も結局はその後次第という気がします。どちらに転がっても、その結果だけを見て次に行動する人は成功や失敗という財産を活かすことはできないですからね。その意味で、「はやぶさ」の次が注目されるところでもありますね。ソニーの盛田氏でしたっけ?「成功への足かせになるのは過去の成功だ」という言葉がありますが、これはあらゆる分野に言えることだと思います。

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COMMENT:
AUTHOR: つるひめ
DATE: 02/19/2011 02:29:23
よく聞かされた言葉「計画の倍かかるのを想定しておけ」、実際それに近かったですね。先達者の経験則は侮りがたい。
それ故にこそか?、アメリカではクリティカルパスなるメソッドまで考案されてる訳で、東西を問わず人間の行動予測は難しい。(だから楽しいんだけど(^_^))
「デスマーチ」懐かしい響きです。
デスマーチの全くないオンスケプロジェクトがいいか、多少はきわどい鉄火場が有った方がいいか、価値観の相違ですね。
私はオンスケの意味だけでなく、きわどい鉄火場を幾つかくぐらせて貰えた経験が今の自分を作ってると思ってます。
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コメント

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