ジェントルマンズ・ナイフという廃れた文化
ジェントルマンズ・ナイフという言葉は欧米でも死語に近いようで、英語の掲示板でも「ジェントルマンズ・ナイフって何を指すの?」といった質問が出ていたりします。そこで今回はジェントルマンズ・ナイフとは何なのかという話を書いてみたいと思います。 ナイフ関連記事 刃物の危険さを知らない人たち /子供から刃物を奪って消えたもの スパイダルコ ドラゴンフライ2 /机の中の小道具 スパイダルコ デリカ4 /スタンダードすぎるナイフ モキナイフの美しさ /グローリーの紹介 ビクトリノックスの世界 /マルチツールの長い歴史 イギリスのシェフィールドが発祥? いくつかの資料によると、ジェントルマンズ・ナイフはイギリスのシェフィールドで作られたのが最初だと書いてあります。確かに18世紀半ばにシェフィールドではスイッチブレードのナイフ(日本では飛び出しナイフと呼ばれる)、つまりボタンを押すとバネで刃が飛び出してくるナイフが発明され、ワンタッチで使える便利さから広く普及しました。 18世紀半ばといえばジェントリ階級の人々が増えていき、ジェントルマンと呼ばれる人たちが力を持っていた時代ですから、このスイッチブレード式ナイフを発祥と考えるのも間違いではない気がしますが、同じような用途のものはそれ以前から用いられています。 かつてはナイフの持ち歩きが常識だった ジェントルマン、つまり紳士の身だしなみとしてナイフを持ち歩いていました。手紙を開ける時、服のほころびから出た糸を切る時、チーズを切り分ける時、ワインのコルクまわりの包みを開ける時など、ちょっとした際に使うためのナイフを持っておくのは常識だったのです。そしてそれらのナイフは威嚇的ではなく、攻撃性もなくエレガントなものだったのです。 ジェントルマンではなくてもナイフは多くの人が持っていました。上記と同じような理由です。日本でも同様で、小型のナイフを持ち歩くのは当たり前のことでした。日本の子供にいたっては小刀を持たなければ鉛筆を削ることもできず、山に入って竹とんぼを作ったりして遊ぶこともできませんでした。まともに遊びたければ小刀は必需品だったのです。 ※小刀 楽天より 話をジェントルマンに戻すと、彼らは身分に応じて高価な材料をハンドルに使い装飾を施したものを持ちました