オリンピックは基本的に儲からない /ロスから始まった商業主義

東京オリンピックに向けて、経済波及効果が何兆円だとか、そんなにあるわけないとか、お金の話が飛び交っています。しかしオリンピックは、そもも儲ける場ではなかったですし、儲かるものでもないと思うのです。お金持ちがドーンとお金を出して行うお祭りみたいなもので、支出の方が上回って赤字になっても仕方ない気がしないでもないんです。






不人気競技も実施しなければならない

オリンピックには不人気競技がありますが、人気がないからと言って勝手に止めるわけにはいきません。そして面倒なのが、人気競技は国によって違いがあることです。日本では馬術やカヌー、自転車のロードレースなどは人気があるとは言えません。しかし自転車のロードレースはヨーロッパではそれなりに人気があり、日本では人気のサッカーはアメリカでは不人気です。

※オリンピックのロードレース競技

オリンピックは多くの種目を一度に行うため、どんなに不人気でも競技場を用意しなければならず、商売としてみると効率が悪い仕組みになっているのです。

公益性を重視していたIOC

そもそも国際オリンピック委員会(IOC)も、スポーツの発展のために公益性を重視していました。その特徴は放映権に現れていて、各国のテレビやラジオに公平に与えていました。現在のように高い放映権料を持ち出して、各国のテレビ局が頭を痛めるようになったのは84年のロサンゼルス大会以降です。この大会から商業主義が始まりました。

ロス大会での騒動

ロスオリンピック組織委員会の会長に就任したピーター・ユベロスという旅行会社の経営者は、赤字続きだったオリンピックを黒字化させるために、大会エンブレムやマスコットを商品化したり広告収入を大幅に稼ぎました。さらにユベロスは広告会社に調査させてオリンピックが巨大な広告塔になることを知ると、最低2億ドルからの入札を行いました。

※ピーター・ユベロス

こうして放映権はABC放送に3億ドルで売却され、この1/3がIOCに払われるはずでした。しかしユベロスは放送設備代の7500万ドルを引き、2億2500万ドルの1/3しかIOCに支払わなかったのです。これにIOCは怒り、その後は放映権料の設定や配分までIOCが独断で決めるようになります。

またロス大会はオリンピック史上初めて黒字の大会となり、オリンピックの資金不足問題を解消したため、その後の大会も同じく商業主義的に行われるようになりました。



商業主義との矛盾
オリンピックが商業主義に転じたのなら、不採算部門にはてこ入れするか廃止することが必要になってきます。不採算部門というのは、非人気競技のことです。しかしてこ入れはほとんど上手くいっておらず、レスリングのグレコローマンスタイルなどは廃止が検討されました。

しかし伝統的な競技の廃止には反対が多く、実現が困難だということがわかりました。てこ入れが難しく廃止もできない競技を抱え、そのための競技施設を作って実施しなくてはならないので、人気のある新種目をどんどん追加して収益を増やそうとしているのが現状です。こうしてオリンピックは肥大化の道を辿っています。

開催都市競技/種目数種目数
1896アテネ9競技43種目
1900パリ19競技85種目
1904セントルイス16競技94種目
1906アテネ13競技78種目
1908ロンドン22競技110種目
1912ストックホルム14競技102種目
1916ベルリン第一次世界大戦のため中止
1920アントワープ22競技156種目
1924パリ17競技126種目
1928アムステルダム14競技109種目
1932ロサンゼルス14競技117種目
1936ベルリン19競技129種目
1940東京第二次世界大戦のため中止
1944ロンドン第二次世界大戦のため中止
1948ロンドン17競技136種目
1952ヘルシンキ17競技149種目
1956メルボルン17競技151種目
1960ローマ17競技150種目
1964東京19競技163種目
1968メキシコシティ18競技172種目
1972ミュンヘン21競技195種目
1976モントリオール21競技198種目
1980モスクワ21競技203種目
1984ロサンゼルス21競技221種目
1988ソウル23競技237種目
1992バルセロナ25競技257種目
1996アトランタ26競技271種目
2000シドニー28競技300種目
2004アテネ28競技301種目
2008北京28競技302種目
2012ロンドン26競技302種目
2016リオデジャネイロ28競技306種目
2020東京33競技339種目

まとめ

東京オリンピックの経済効果は30兆円と言われますが、「ロボット産業の拡大」などオリンピックからは間接的すぎて、聞いてもすぐにわからないものまで含めて試算されています。しかも全てが上手くいったとい過程で試算されているので、都合が良すぎる計算です。

ロス大会以降、赤字を出したのはバルセロナ大会ぐらいで、他の大会は基本的に黒字収支になっているのでオリンピックは儲かるという意見があります。しかしここに書いたように、基本的に儲かりにくい構造を抱えているため、利益を出すにはかなりの工夫が必要になってきています。東京オリンピックは大丈夫でしょうか。現状を見ていると、とても大丈夫とは言えない気がするんですよね。




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