ドイツの変な飛行機 /天才が生んだ異形の飛行機

※この記事は2016年3月5日に、前のブログに書いた記事を改編して転載しました。


第二次世界大戦中には、奇想天外な兵器がいくつも開発されました。特にドイツでは飛行機の分野で独創性を発揮したのですが、そこには2人の天才科学者の常識にはとらわれない自由な発想がありました。「変態兵器のイギリス、変態飛行機のドイツ」なんて言う人もいますが、はたしてドイツでどんな飛行機が開発されたのか、見てみましょう。





リヒャルト・フォークト博士

ドイツのブローム・ウント・フォス造船所に主任技術者として招聘されたフォークト博士は、ユニークすぎる設計を斬新な発想で行います。博士を有名にしたのはBV141偵察機で、これはナチスの全方位視界が良好な偵察機というリクエストを忠実に再現しています。
※BV141

形状は写真の通り、左右非対称です。右翼にカゴのようなものがくっついていますが、これが操縦席です。プロペラやエンジンで視界が遮られないように、翼の上に操縦席を設置したのです。さらにバランスをとるため、右側の尾翼を無くしてしまいました。


この奇異な見た目に反して、なんと安定性は抜群だったらしいのですが、度重なるエンジンの不調で採用されませんでした。しかしこんなことでフォークト博士は止められません。なんと次は翼の端っこに操縦席を搭載した機体を設計します。こちらは試作機すら作らせてもらえませんでした。

※BV163


さらにこんなものまで設計します。胴体がズレて付けられているアヴァンギャルドな設計ですが、航空力学的に間違ってはいないそうです。しかし周囲に理解されることはなくボツになっています。フォークト博士の後期のデザインは、意地でも普通の形の飛行機は作らないという決意でもあったかのように、異形の飛行機を連発しています。

※BV111



フォークト博士は数々の左右非対称の機体を設計しますが、これは奇抜さを狙ったものではないようです。プロペラが回転する左側に機体が曲がりやすいトルク特性を打ち消すため、右側を大きく重くしていたそうです。

戦後はアメリカでボーイング社を初めとして、様々な仕事に取り組んでいます。惜しむらくは、自宅が全焼して資料の多くが失われたことでしょうか。84歳で、その人生を終えています。



アレクサンダー・リピッシュ博士

リピッシユ博士は、ミュンヘン生まれで飛行船で有名なツェッペリン社でも働いたことがある正統派で、流体力学の天才でもありました。しかし有り余る才能は、時代を先取りしすぎています。有名な設計にロケットエンジンを搭載したメッサーシュミットMe163があります。

Me163

当時としてはあり得ない速度を実現して迎撃不可能と言われたのですが、同時に速すぎるため自身が撃つ機銃も当たらないと評判でした。その驚異の加速力は時折パイロットを失神させ、乗るだけで命がけと言われました。その性能は連合国にとって驚異でしたが、航続距離が致命的に短いため、Me163が配備されている空港を迂回することで戦闘を避けていました。

終戦が近くなると、博士は画期的で独創的な飛行機を設計します。P13aと呼ばれるこの飛行機は、無尾翼、デルタ翼という特徴的なスタイルだけでなく、垂直尾翼に乗り込んで操縦するという大胆さを持ち合わせています。これだけでも個性的すぎますが、実は搭載されたジエットエンジンの燃料に石炭が使われます。

※上にのっている小さいのがP13a


石炭ですよ。ジエットエンジンの燃料が。。。

戦後、アメリカがこの珍妙な飛行機を発見し、風洞実験を行うとマッハ2.5でも安定していたそうで、ただの変わり者でなかったことがわかります。

※P13a

戦後、博士は研究を重ねて、さらに変な飛行機の開発に着手します。エアロダインと名付けられたこの飛行機は、なんと垂直に離着陸するそうで、翼もないのに胴体の揚力だけで航行するのだそうです。唯一の問題は、大胆すぎて誰も出資しなかったことでしょうか。



高度な計算と天才的なヒラメキによって、唯一無二の飛行機を発表し続けたリピッシユ博士の飛行機は、製作に至らないことが多かったのが残念です。


まとめ

ドイツは大戦中に奇抜な飛行機を連発しましたが、その先進性から戦後は米ソが競ってその技術を奪い合いました。後の航空工学、宇宙工学に多大な影響を及ぼし、戦後の科学技術に大きく貢献しています。単に変な飛行機というわけではなく、技術的な裏付けがあったんですね。自由な発想を具現化していたこの時代の飛行機は、現在の視点で見ても興味深い例がたくさんありますよ!








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