アメリカ軍の基礎知識をまとめてみる
北朝鮮のミサイル問題、オスプレイ配備、アフガン情勢、その他いろいろなニュースにアメリカ軍は登場します。しかしアメリカ軍の基礎知識が欠けているため、今ひとつニュースが混乱している時もあります。そこでニュースを見る時に役立つ、アメリカ軍の基礎的な知識をまとめてみようと思います。
※なんだか楽しそうな海軍のみなさん |
1.アメリカ軍とは
アメリカ軍は5つの軍事組織から構成されます。通称、五軍と呼ばれるのは、以下の通りです。
(1)陸軍 United States Army
(2)海軍 United States Navy
(3)空軍 United States Air Force
(4)海兵隊 United States Marine Corps
(5)沿岸警備隊 United States Coast Guard
間違われやすい点
・沿岸警備隊もアメリカ軍の一員
・海兵隊も独立した軍隊
この中で特殊なのが沿岸警備隊で、彼らは軍隊でありながら逮捕権を持つ法務執行機関です。つまり警察でもあるんです。そのため他の組織が国防総省(ペンタゴン)の配下にあるのに、沿岸警備隊は国土安全保障省に属しています。
しかし有事の際は、沿岸警備隊は海軍に準ずる組織になり、国防総省の管轄になります。そしてこれらの軍隊をとりまとめるのが、国防省になります。
※五軍のそれぞれのマーク |
2.アメリカ軍を指揮する人
アメリカ軍の最高司令官は大統領です。しかし大統領は軍事の専門家ではないことが多いので、補佐やアドバイスをする人が必要です。それが統合参謀本部になります。各軍からの軍人で組織され、まとめ役に議長がいます。
湾岸戦争では、後に国務長官になるコリン・パウエル氏が統合参謀本部議長として有名になりました。
間違われやすい点
・統合参謀本部は軍に指揮や命令ができない。
統合参謀本部は軍人で構成されていますし、記者会見を行うことも多いので、彼らが指揮をしているように誤解されがちです。しかし文民統制(シビリアン・コントロール)の観点から、彼らにできるのは大統領への助言だけで命令は出せなくなっています。
※コリン・パウエル氏 |
3.そもそも海兵隊ってなんなんだ?
海兵隊は、陸・海・空軍の機能を持ち合わせた軍隊で、海からの上陸や空挺(パラシュート降下)で、最初に敵地に乗り込む部隊です。自らを「殴り込み屋」と称しているのはそのためで、戦車部隊がやってくるための活路を開いたり、敵を陽動する任務を請け負っています。
陸・海・空軍に比べて人数は少ないですが、少数精鋭で犠牲者が最も出やすい部隊でもあります。
間違われやすい点
・なぜかネットでは海兵隊の動員は議会の承認が不要という説が流布していますが、海兵隊だけを特別に扱う法律はありません。
※米海兵隊のみなさん |
4.議会と大統領の権限
合衆国憲法に、議会と大統領の権限が記載されています。原則として議会が開戦するかどうかを決定して宣戦布告を行い、それをうけて大統領が軍に出動命令を出します。しかしアメリカが攻撃された場合など、緊急時には大統領が議会の承認を得ずに軍に出動命令を出すことができます。
さらに戦争制限法では、攻撃されていなくても、敵対行為に巻き込まれる差し迫った状態にある時に、軍を投入することを規定しています。大統領は議会の承認無しに軍を投入できますが、48時間以内に上下両議会の議長に書面で報告しなくてはなりません。もし議会が承認しなければ、大統領は軍隊を撤収させなければなりません。
間違われやすい点
・大統領は議会の承認無しに、勝手に軍を投入して戦争を始められません。例外は敵からの攻撃を受けた時です。
宣戦布告は議会の仕事というのもポイントです。大統領は強力な権限を持っていますが、アメリカは民主国家なので議会が大きな力を持っています。
※この方が、勝手に戦争を始められるわけではありまえせん。 |
5.まとめ
アメリカ軍全体の誤解が多い点をまとめてみました。テレビの解説者なども、時々言っていることが怪しいので、ニュースを見る時などに役立てば幸いです。
もっと個別の話をすれば、「アメリカ軍の新兵訓練では、激しいシゴキが待っている」などの誤解されている点が多いので、こちらもいつかまとめてみたいと思います。
米軍も使用しているホイッスル。驚くほど大きな音が出て、遠いところまで聞こえます。夏の行楽にどうぞ。
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