日韓問題になった旭日旗騒動を振り返る

- 8月 30, 2017

旭日旗が韓国で問題視されるようになり、韓国内で旭日旗を掲げる行為を違法化する法案も提出されたことがあります。なぜ旭日旗が問題視されるようになったのか、改めて整理したいと思います。

2011年アジアカップ準決勝

サッカーのアジアカップ準決勝で、日本と韓国が対戦しました。PKで得点した韓国のキ・ソンヨンは、カメラの前で頰をかいて猿の真似をして得点をアピールします。

※右がキ・ソンヨン

これが韓国内で賛否両論となります。当時、韓国内では日本人をバカにする時に猿の真似をするのが流行っていたことから、人種差別的行為だという批判と、「よくやった」という賛辞がありました。

キ・ソンヨンは、韓国のメディアに対して、あらかじめ用意したパフォーマンスだと語りましたが、人種差別撤廃を掲げるF.I.F.A.がこの行動を問題視しだすと、ツイッター上で

「観客席の旭日旗を見て涙が出ました。私も選手の前に大韓民国国民です…」

と発言します。人種差別的な意味ではなく、旭日旗に腹が立ったからだと主張したのです。韓国内ではキ・ソンヨンの擁護派から「人種差別の意思はなく、旭日旗への報復だ」という認識が広がりました。これを問題視した日本サッカー協会がキ・ソンヨンへの聞き取り調査を依頼したところ、今度は「あのパフォーマンスは日本人に対してではなく、（自身が所属するスコットランドの）セルティックでプレーしていて相手のサポーターから韓国人ということで猿呼ばわりされている。そういう差別発言をする人たちに向けてやったんだ」と、発言を翻しました。

しかし、この発言に人種差別をしていると名指しされたセルティックスのサポーターが怒り出し、イギリスメディアで叩かれるようになります。追い詰められたキ・ソンヨンはこの件に沈黙するようになりますが、その後に旭日旗を見てカッとなったと再び発言をひるがえ

2012年ロンドン五輪サッカー

3位決定戦で日本と韓国が対戦した際に、パク・チョンウが「独島は我らの領土」というプラカードを掲げ、日本が国際オリンピック委員会(IOC)に政治的パフォーマンスにあたるとして抗議しました。

※パク・チョンウのパフォーマンス

これに対して、日本の体操競技のユニフォームが日の丸に放射線状の模様があるデザインを指摘し、IOCが旭日旗の問題を無視して韓国の独島セレモニーだけに制裁を加えるのは差別だと主張し、元慰安婦の方がIOCに抗議の手紙などを送る事態に発展しました。

※韓国側が問題視した日本の体操競技ユニフォーム

IOCは韓国からの抗議を受け止め、ジャック・ロゲIOC委員長が竹島のプラカードはIOCが規定する政治的表現禁止規定に違反しているが、日本のユニフォームは違反にならないとコメントを出しました。

旭日旗撤去の動き

韓国の新聞などで旭日旗が問題視され、各地で旭日旗の撤去を求める動きが出始めます。放射線状のデザインの多くが標的になり、アメリカなどで似たデザインのものを撤去するように韓国人が要請する事案が発生しています。

※韓国人留学生から撤去要請が出された、ペンシルバニア大学のステンドグラス。

旭日旗禁止法案

2013年に韓国の国会議員が、韓国の公共の場で旭日旗を掲げた場合に、懲役1年の刑を科す法案を提出しました。

法案が可決した場合、日米韓合同軍事演習などで海上自衛隊の艦船が韓国に寄港した場合、艦長を逮捕することになります(旭日旗は、海上自衛隊の旗なので艦船に掲揚している)。そのため重大な国際問題になる可能性もあり、可決しないまま時間切れになっています。

そもそも旭日旗とは？

日の丸に放射線状のデザインは、古くから日足紋と呼ばれ、武家に好まれてきました。日の丸に放射線状の赤を書き足した旭日旗は、紅白幕同様に縁起物として、めでたい時に使用されています。

そのためアサヒビールのマークや、朝日新聞などにも採用され、昭和の後期までは一般家庭でも祭日や正月などに掲揚されていました。私が小学生の頃は、祭日になるとご近所の方がよく玄関先に出していました。

※左：アサヒビールのマーク　右：朝日新聞社

1870年に大日本帝国陸軍の軍旗に採用され、海軍も軍艦旗として採用されました。また、1954年に自衛隊が発足すると、陸上自衛隊の自衛隊旗として、海上自衛隊の艦上旗として採用されています。

問題の本質

2011年のキ・ソンヨンの猿真似騒動以前に、旭日旗が問題視されたことはなく、日韓戦の応援にも旭日旗は使われていました。韓国内での急速なナショナリズムの台頭時期に、キ・ソンヨンの発言が重なって注目されるようになったのです。

※韓国で行われた日韓戦。旭日旗は普通に掲げられていました。

旭日旗を「戦犯旗」と呼んで、旭日旗そのものを問題視する人達が韓国にはいますが、旭日旗が本質的な問題とは思えない面が多々あります。例えばフランスで開催されているジャパン・エキスポの韓国のブースでは、旭日旗のデザインが何年も前から売られていて、韓国で旭日旗が問題視されるようになってからも販売されています。