ダイアン・レインを返せ /かつての銀幕のスターの凋落

※この記事は2016年6月8日に、前のブログに書いた記事の転載です。

83年のコッポラの映画「アウトサイダー」で、ダイアン・レインは宝石のような存在でした。そして「ランブル・フィッシュ」、翌年の「ストリート・オブ・ファイアー」と、立て続けにヒット作に出演し、彼女の人気は80年代半ばには絶頂を迎えます。




CMでも大人気

日本での人気も絶大で、カメリア・ダイアモンドやマックス・ファクターなどのCMに起用され、彼女を見ない日はないほどでした。私の十代の多感な時期の中心に、ダイアン・レインは存在したのです。



ダイアン・レインのCMをまとめた動画をリンクしました(クリック)。

ところが、彼女の人気は80年代半ばに消えてしまいます。コッポラのお気に入りだったレインの不幸は、コッポラの才能が枯れかかった時に重用されたことでしょう。作品に恵まれず、そのまま消えてしまいました。


女盗賊として再登場

そんなダイアン・レインが、突如私たちの前に帰ってきたのは、92年のことでした。にっかつの創立80年記念の超大作「落陽」に出演したのです。50億円という破格の制作費を投入し、にっかつの社運を賭けた映画で、加藤雅也が主演し、ドナルド・サザーランドに香港のユン・ビョウも出演する、当時でも目眩のする映画でした。




原作は元朝日新聞記者で小説家の伴野朗の同名小説で、なんと映画では何の経験もない原作者の伴野朗が監督するという、大胆不敵すぎて意味がわからない意気込みが話題になりました。ちなみに他の出演者は、にしきのあきらに尾藤イサオ、立川談志にキラー・カーンと、団鬼六に水野晴郎、そしてナレーションは江守徹と、書いていてクラクラする鉄壁の布陣です。

こんな映画が存在したのかと疑わしくなるほど壮大で、脚本がとっ散らかり、原作を読んでいない人には全く話の流れがわからない怪作、迷作に、馬賊の女首領という役柄でダイアン・レインが帰って来てしまったのです。もう、これは悲劇としか言いようがありません。危険すぎる臭いに、私は映画館に向かうことを拒否しました。怖いもの見たさもありましたが、見てしまうと何かが壊れそうな気がしたのです。



しかし私の友人は、かつて胸をときめかせたダイアン・レインを見たくて、映画館に行きました。明らかに体調が悪そうな彼に感想を聞くと、

「中学時代に好きだった女の子が、東京に行って落ちぶれて、ポルノ女優になって帰って来たような悲壮感」

と表現していました。だから私は見たくなかったのです。青春時代の思い出を粉々に砕かれ、汚された友人が二度と「落陽」を語ることはありませんでした。

ちなみにこの映画は、早々に上映打ち切りとなり、傾いたにっかつをさらに傾かせ、倒産に大きく貢献しました。

ダイアン・レインは、21世紀に入って再評価され、最近では大作映画にチョコチョコ出演中ですね。「落陽」出演は、彼女にとってどんな経験だったのな、聞いてみたい気もします。



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