カーター元大統領の訪朝は面白い一手

北朝鮮問題の解決に向けて、アメリカのカーター元大統領が北朝鮮を訪問するかもしれないという話が出ています。カーター氏は乗り気のようで、以前も北朝鮮の核開発疑惑の際に訪朝したことがあります。


私はこれは良い手のように思います。トランプ大統領は共和党なのに対し、カーター氏は民主党出身です。そしてカーター氏は外交音痴で失敗続きです。ですからカーター氏はほとんど期待されておらず、失敗しても乗り気になっている本人以外は誰も傷つかないからです。

人権外交

冷戦下で大統領に就任したカーター氏は、人権外交を掲げました。正しいとは思うのですが、サウジなどの王族にも人権を迫って関係を悪化させています。またパレスチナ国家樹立を容認して、アメリカ国内のユダヤ人から猛烈な反発を受けました。

エジプトとイスラエルの和平協定をカーター氏の手柄のように言われることもありますが、アラブ国家として単独和平を申し出たエジプトのサダト大統領がいなければ不可能だったことで、これはエジプト主導の偉業と言った方がフェアだと思います。

サダト暗殺事件の際には、既に亡くなっているサダトにお見舞いを送っています。

※サダト大統領暗殺の瞬間

イラン革命

パリからイランに帰国するホメイニ師を、何もせずに見過ごしました。ホメイニ師が帰国すれば、クーデターが起こる可能性が再三指摘されていたにもかかわらずです。アメリカはイランから石油を輸入していたため石油危機が起こり、インフレを引き起こして不況になりました。

※ホメイニ師を掲げたイラン革命
そしてイラン革命の成功を見過ごしただけでなく、その後の人質事件で、さらに失敗を繰り返します。

イーグル・クロー作戦

イラン革命により、イランのアメリカ大使館の大使館員が人質になりました。カーター大統領は人質救出のためにイーグル・クロー作戦を実施しますが、救出部隊は大使館に到着する前に事故を起こし、救出作戦は失敗しました。

武力攻撃を知ったイランは態度を硬化させ、解決が遠のきました。イーグル・クロー作戦は、アメリカ軍の代表的な失策として、さらにカーター大統領の失策として最も有名な事件です。

※墜落したヘリコプター

その傍ら、アメリカの富豪ロス・ペロー氏は傭兵部隊を雇ってイランに取り残された自社の社員を救出して英雄視されました。アメリカ大使館の職員が解放されたのは、カーター氏が大統領を辞めた日でした。

北朝鮮訪問

大統領職を離れ、カーター・センターを設立すると、積極的に外交に関わっていく姿勢を見せます。94年には核開発疑惑で揺れる北朝鮮を訪問し、金日成国家主席と会談をしています。

※金日成と会談するカーター氏
この時、北朝鮮から核開発中止の約束をとりつけ、見返りとして軽水炉建設の費用を負担しますが、北朝鮮は約束を反故にして今日に至ります。アメリカは北朝鮮にお金を払っただけで、何も得ることができませんでした。

なぜカーター氏は北朝鮮に行きたいのか

カーター氏は大統領時代も、その後も外交では失策ばかりです。特にアメリカ国民が人質になり、残虐行為を受けている中で何もできなかったことに対するアメリカのショックは大きく、ロナルド・レーガンという超タカ派の大統領を生むことになりました。

カーター氏としては、酷い大統領だったという評価を少しでも好転させたいというのがあるのでしょう。ウォーターゲート事件で辞任したニクソン元大統領が、辞任後も積極的に外交に加わり、死ぬ寸前までアメリカの国益のために動いて評価を高めたので、同じことを考えているのかもしれません。

トランプ大統領の反応

当然ながら否定的で「過去の大統領は近づかないでくれ」と、冷ややかな発言をしています。うがった見方をすると、政府が否定的な態度をとることで、カーター氏が失敗してもアメリカ政府は批難を免れます。あくまでも政府の代表として訪朝するのではなく、個人として勝手に行くというスタンスをとらなければなりません。

まとめ

カーター氏の訪朝は、北朝鮮にはアメリカと交渉する窓口として機能し、アメリカには北朝鮮の意向を確認する糸口になります。そして訪朝が失敗しても、アメリカも北朝鮮も傷つかないですし、誰も期待していないので、悪手ではないと思います。

不安な点は、カーター氏が勝手な約束をしてしまうことで、これに関してカーター氏の意思などを確認するしていると思います。

なんだか酷い書き方になってしまいましたが、カーター氏が大統領だった時期は国内外で大きな事件が続き、時期的に不幸だったとも言えます。海外では上記のイラン革命があり、国内ではスリーマイル島の放射能漏れがありました。大統領になるタイミングが悪かったとも言えるでしょう。

カーター氏は2010年にも北朝鮮を訪問しているので、なんらかのパイプを持っていると思われます。これで事態が好転するかはわかりませんが、何かしら良い方向に向かうキッカケになればと思います。



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